敵対する勇者と魔王。
古代より、物語に語り継がれてきた関係は、しかし百年前に「勇魔不戦条約」が締結されてから、少しずつ変わってきました。
そして、現代の勇者アリス。
先代勇者の父の遺志を継ぎ、魔族と友好的な政策を執っているにもかかわらず、「あの日」から魔王を討ち取ることを心に誓っていました。
一方、現代の魔王クレス。
勇者アリスと相まみえたその瞬間――。
「勇者様! 会いたかったです!」
ここから始まる、勇者と魔王のすれ違いラブコメディ……。
――だと思ったら大間違い!
最後に勇者の言葉の剣にぐっさりと刺されたのは、読者である私でした。
コミカルなやり取りの中にも、切なさのかけらが仕込まれていて、じわじわと「来ます」。
勇者に仕える双子騎士や、魔王に忠実な執事と一緒に、勇者アリスと魔王クレスの物語を是非、見守ってください。
魔王は人間を滅ぼそうと暴虐の限りを尽くし、やがて勇者に退治されてしまいます。
勇者と魔王の闘いは繰り返され、壮大なる歴史として刻まれていきました。
幾度とない血塗られし闘争。そんな中、勇者は、魔王は、思いました。
人類と魔族とで、和平を結ぼうではないか。
まだぎこちないながらも、人類と魔王は共生の道へと歩み始めました。
もちろん賛同ばかりではありません。多くの人類や魔族が死に追いやられた過去を憎み、お互いへの不信感は完全に払拭されてはいませんでした。
それでも、手と手を取り合う勇者と魔王の姿を受けて、民衆の心は徐々に変わっていきました。
けれども、そんな優しすぎる勇者と魔王は
悲劇から8年もの月日が流れ、新たに就任した勇者と魔王。
ここからの物語は、もう語るのも野暮でしょう。
新たなる一歩をその目で確かめる方が、きっと楽しいはずですから。