80 愛情の証明

萌神「びええええん!」


萌兄「(ポンポン)よしよし」


雄常「家に帰ったら大泣きしている萌神と慰めている兄君がいた」


萌兄「驚かせてごめんね。ついつい少女漫画の王道、頭ポンポンを見せびらかしてしまったね。すぐに代わるよ」


雄常「別にどうとも思わないけど、何なんだ、その頭ポンポンとやらは」


萌兄「知らないのかい? この王道にして大多数の女子が憧れるこの行いを」


萌兄「人間は悲しみに囚われることは多々ある。そのときに慰めてくれる人というのはとてもありがたい。それは雄常くんも分かるよね?」


雄常「ああ、俺も子供の頃母さんがそうしてくれた……今思い出したけど、そんな風に軽く頭を叩いてくれた気がする」


萌兄「君のお母さんはよく分かってるね。人を安心させるとき、心地よい肉体的接触は重要なことなんだ。これは動物実験でも証明されている。ハーロウの赤ちゃん猿の実験というものを知ってるかい?」


雄常「もしかしてあれか? 猿が布を巻かれた人形みたいなのに抱き付いてる奴」


萌兄「その通り。あの実験から、動物は接触の快適さを求める生き物だということが証明された。そして人間も動物の一種、さらに頭ポンポンは適度に触覚を刺激するため、触られる嬉しさを呼び起こす。だから人間が頭ポンポンを喜ぶのは必然。需要が高いのも当然のことなのさ」


萌兄(ちなみに全国の男性諸君! この行いはイケメンであり、かつ信頼が多分にあるときのみ許される行為だ! 女の子が全て喜ぶと勘違いして節操なく即座に行ったら、平手打ちが飛んでくるよ!)


雄常「そういや今さらかもしれないけど、萌神は何で泣いてんだ?」


萌兄「うん、冷蔵庫にとっておいたシュークリームが勝手に食べられたことで泣いてるんだ」


雄常「そっか、ところで兄君、お前の口についているクリームは何だ?」


萌兄「勿論冷蔵庫にあったシュークリームだよ! おいしかった!」


雄常「こうまで清々しく答えてくるとは思わなかった」

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