70 明治26年3月初演

萌神「雄常、ゴムをくれないか? ああ、ゴムとか言っても薄々タイプとか渡して来るなよ? 見てわかるだろうが、私は清純派なんだ。清楚にして可憐である私にそのゴムは似合わないからな」


ロボ娘「どの口が清純とかぬかすか。この腐れ駄女神がロボ」


雄常「はいはい、ともあれ輪ゴムな」


萌神「いや、違う。髪止め用のゴムが欲しいんだ」


雄常「髪止め用のゴム? ……これでいいか?」


萌神「そう。使う道具こそこれ1つなれども、その支持者たるや数多となる萌え、今ここに完成だ!」


雄常「あー、ポニーテールだよな、それ」


萌神「そう、かつてはポニーテール協会なるものまで作られ、今なお人気溢れる萌え、ポニーテール萌えよ!」


萌神「人間は動くものを追う習性がある! 何故なら遥か古代の時代、人間は他の生き物を狩ることで生きてきた! 動くものを五感で感じ、追い詰めようとしてくる! 太古の昔より受け継がれてきたこれは最早本能! ポニーテールはその本能を刺激するものなのよ!」


萌神「歩行でも、座しても、身じろぎですらポニーテールは揺れる! それにより受け継いできた狩猟本能を呼び覚まし、繁殖本能さえも覚醒させる! 複雑に絡まった2つのものからなるこの萌えは、構造的にも遺伝的にも関係しているDNA的な萌えといえるだろう!」


萌神「さあ、雄常よ! 我が姿を見よ! このポニーテールの揺籃ようらんにより『本能覚醒! ア~ア、アァア~ッ!!』となるんだ! そして同時に萌えを心から放出し、萌えパワーを提供しろ!」


雄常「確かに似合っているし、可愛いとは思うんだけどな」


萌神「兆し! 圧倒的兆し! そこまで分かったなら萌えまで後僅かだ! ならばさらにアピールするために萌大解放! ポニーテールをブルンブルン揺らすぞ!」


萌神「もみあげを掴み! 頭を旋回! 首の力だけでなく、全身の筋肉を利用して、大きく回す! どうだ!? 今大蛇の如き我が髪は! とっても萌えるだろう!?」


雄常「見事な歌舞伎の鏡獅子だな」

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