45 悲しみの無効へ(中編)

萌神「歴史を振り返ってみても悲劇は人気がある。ハムレット然り、メディア然り。人を選ぶ面は否定できないが、悲しみとは絶対悪ではないのだ。必要とされているものなのだ」


ロボ娘「これは科学的な観点から見てもおかしいことではありません。人は涙を流すことでストレスを軽減させます。副交感神経の働きを呼び起こし、ストレス物質を涙と共に流すことでストレスを少なくしている、と言われています。また悲劇を見ることで自らの安心を確認するともいわれています。だからこそこれまでいくつもの悲劇が作られ、称えられてきたのですロボ」


雄常「………………」


萌神「そしてこれは萌えとて例外ではない。悲しみや可哀想という思いが萌えにつながるときもあるのだ。誰からも助けられないから応援したい、助けたいという気持ちから萌えにつながるときもあるのだ。その萌えの名は薄幸美少女」


萌神「本来幸せで、温かで、笑顔溢れる存在である少女。両親から、友達から、他人から多くの愛を一身に受け、温かい世界に生きている少女。光あふれる未来が約束されている少女。それなのに周りの人は死んでいき、自分は明日をも知れぬ境遇。肉体的精神的苦痛がざらに繰り返される毎日」


萌神「このように幸せであるべきものが幸せにならない、悲劇に塗れることでより悲しみを引き立てる。それ故『幸せになってくれ!』『死なないでくれ!』という思いを抱く。かなり広義的であるがこれも萌えの1つであり、それを表現するために私は「不幸だ」と言っただけなんだ」


ロボ娘「私もそうです。萌神が『こう言えば雄常が喜ぶ!』と言っていたので半信半疑ながらも言ってしまっただけなのです。私は一度だってそんな風に思ったことはありませんロボ」


雄常「……無理して言ってるんじゃないのか?」


萌神「何度も言わせるな。それは無い」


ロボ娘「ありえませんロボ!」


雄常「……そっか、それならいいんだけど」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る