19 極めて近く、限りなく遠い世界

萌神「先日語った追う愛と追われる愛についてだが、どちらでもないと語る人がいたんだ」


雄常「ほうほう、しかしどっちも違うとなると、お前の萌え論は否定されたわけか」


萌神「ふっ、私がそういった反応を考えていないとでも思ったか?」


雄常「考えてたのか?」


萌神「考えていないわけが無いという訳でも無いけれど考えていたかと言うと嘘になるかもしれないからそれはないと言わざるえないわけであって」


雄常「つまり考えてなかったんだな分かった」


萌神「う、うるさい! ともあれそこで無視するようでは萌えの神の名が廃る! 故に私は考えた! 追う愛でも追われる愛でもない、第三の愛とは何か⁉」


萌神「ずばり! 見つめる愛だ!」


雄常「なるほど、ストーカーか」


萌神「一発で夢もロマンも萌えも打ち砕くこと言うな! この見つめる愛は胸キュンなんだぞ! 北斗の拳のトキの様に! ベルサイユのばらのジェローデルの様に! 遠くから見つめ幸せを祈る! この愛しさとせつなさと心強さが混じる愛! 萌えの具現形態と言わざるを得ない!」


雄常「と言われても今いちわからないなぁ」


萌神「ならば雄常よ、お前に見つめる愛を体験させてやろう! 今から私が24時間お前を見つめる! 幸せになるのを祈りながらな! それでお前の中の萌えパワーを私に遂に献上してもらおう!」



雄常「……」


萌神「……」ジー


雄常「…………」


萌神「…………」ジー


雄常「………………」


萌神「………………」ジー


雄常「………………分かった。お前の見つめる愛の凄さは分かった。分かったから、押し入れの隙間からうさみちゃんみたいな目で見ないでくれ。さすがに怖い」

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