第30話 「Joker」から見る社会問題ー(5)-

(5)「悪」の信仰心―模倣犯について―


あの映画の中でジョーカーは最後象徴となった。それは賛同者から支持されたということになるあの歴史を経てジョーカーは悪のカリスマとして名をはせることになるのだ。ではなぜ彼のような社会不適合者・犯罪者に人は胸を奪われ模倣犯のようなものまで出てくるにいたるのだろうか。悪とは許されざるものだろう。しかし犯罪がなくなることはない。犯罪はきっと人類の思考を完全統制するか思想犯を逮捕するという状態にまで社会が進むまで消滅には至らないだろう。それほどまでに難しい問題だ。人間が動物の一部だということを考えれば別に殺害するという行為が同族である人間の間でのみ忌避されている話で同族じゃない他の動物に対しては現在も平然と行われている。動物が人間を殺すこともあるし人間が動物を殺すこともある。では人間という動物もまた殺人という行為をする。これは悲しいことではあるが人間の内面に常に混在しているものなのではないかと考えている。これを抑制するのが理性であり人類の持ち得る知性の力だと思うのだ。しかし、きっとすべての人間の中にこの狂気は内在している。これを呼び起こすのが人によって引き起こされた社会が戦慄するほど殺人という衝撃だ。それは社会が注目し戦慄し恐れればきっと内在する狂気を引き起こしうるだろう。故に影響を与えるのだから。しかし、これは誰にでも起こる話ではない。きっと特定の状態にある人間が影響を受けやすいと考える。彼らは生活環境の中で狂気を帯びる要因に触れているだろうしそれが日常的、もしくは常識の中にあるという勘違いを起こしているかもしれない。また精神が未発達の状態とも考えられる。そんな彼らにとってカリスマの登場は社会において好ましくない影響を及ぼす。ジョーカー以外にも悪のカリスマ扱いされる人間は多数いる。それは興味を持ち支持する人間がいるということだ。宗教が経典や教えを守ることを義務とすることで「善」としての信仰を得ているのなら彼らは人間の常識を疑い残虐な好奇心が動かすままに殺人を犯しその残虐な行為が畏怖を呼び権威となり「悪」としての信仰を得ているのかもしれない。何故人を殺してはいけないのか。死刑という刑罰も見直すべきという意見が定期的に出てくる。また、我々は人の「生」には注目しない。メディアでも「今日、北海道の札幌市の○○病院で××家の長男△△君が生まれました」なんて報道はしない。しかし殺人の報道はされる。人間は形の上では「死」から遠ざかったかもしれないが情報として「死」は常に耳に入ってくる。人間は「死」を重視しているのだ。それは「死」の持つ「離別」という性質がそうさせるのだろうか。それとも「死」を生活から遠ざけたからそうなったのだろうか。もしかすると人は出会いよりも別れを重視するのかもしれない。この負のイメージは大変印象に残る。「死」も「悪」も両方とも負のイメージを持つ言葉だ。これらは畏怖というわかりやすい形で権威を示すことができるのだろう。それが一部の人間に影響を与え行動をとった人間をカリスマとして崇め尊敬し自らそれを真似た模倣犯になるのかもしれない。スポーツの中で「相手をたおしてやる」という言葉があるがこの「たおす」の究極系は「殺す」だ。子供たちも「死ね」・「殺す」・「たおす」を抵抗なく使う。大人もそうだろう。「死」は生活から遠ざけられ言葉として類似する言葉は毎日の報道の中で意味を軽量化し見事に日常の会話の中で攻撃的な意味を持つ強めの冗談として、また相手を威嚇する言葉として社会で乱用されるに至ったのだ。「悪のカリスマ」なる言葉も奇妙な言葉だ。忌むべき「悪」に褒めるように「カリスマ」とつける。これは「悪」が日常化したゆえの表現だと考える。これでは犯罪はなくならない。誰もが思っているだろう犯罪はなくならないとこんなにも日常的に報道されていたらそう思うことも理解できる。確かに戦後の日本社会の中で今は随分犯罪が減った。日本社会は治安がいいとも言われる。確かに日本は平和だ。しかし「悪」なるものは「明確な悪意」から「なんとなく」という掴みようのないものにその主軸を移したのかもしれない。その「なんとなく」を助長するのが「カリスマ」という「象徴」だ。「カリスマ」なる彼らが徹底的に罰されるのを生で見るということ再び生活と「死」との距離を近づけるということは抑止力になるかもしれない。かつて人間は死刑を見世物としていた時代があるのだ。人類みんなその時から時間がたったからといって文明が進んだからといってそれを見て楽しんでいた人種がいる以上その遺伝子は確実に内面に宿っていると言ってもいいだろう。忘れてはいけないのは所詮人間も動物の一種だということだと私は深く思う。


これで今回のシリーズは終わることになる。皆さんはどう感じただろうか。「Joker」は賛否あるが今の社会の持つ一可能性を示唆している面では面白いと考える。まだ見てない人も気が向けば読んでみてもいいのでは。

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これはあくまで私の意見でそれ以上でもそれ以下でもない自論たち @Okaso

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