第144話 孤立無援

 兄に会って欲しい女性がいるので、時間を作ってもらえる様に頼んだ時がある。


兄なら僕の精神障害の事を、上手く恭子に話してくれると思ったのだ。しかし兄の返事はノーだった。


 兄は精神障害の僕には、結婚が無理だと考えていたのだ。そんな女に会えないとキッパリ断られた。


 僕は孤立無援になり苦しんだ。


 恭子の父親は寝たきりになり母親が面倒を見ていた。建物は古いが持ち家だ。母親は元幼稚園の園長で、恭子は厳しく育てられたみたいだ。


 恭子の母親に一度だけ会った事がある。とても優しい、恭子の事を大切にする人だと思った。


 逗子海岸が恭子のお気に入りで、二人揃いよく海岸沿いを歩いた。写メもよく撮り待ち受けにした。


 先輩の澤田さんと飲んだ時、恭子の話になるとバツイチで子供もいるのだから、気軽に付き合えば良いと言われた。


 精神障害の事が言えないと相談すると「難しい問題だけど早めに言わないと苦しむだけだ」と言われた。


 写メを見せると、普通のおばさんじゃないかと言われカチンと来たが話題を変えて飲みなおした。


 恭子はマメに携帯に自分の写メ付きメールを送ってくれた。僕は恭子に夢中になっていた。


 恭子はアメリカに住んでいた時期があり英語がペラペラだった。僕と口喧嘩になると英語で喋り僕を圧倒した。


 恭子の存在が僕を躁状態にした。


 当然だと思う。僕の理想の生活が続いているのだから。

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