第111話 寂しい夜の生活

 日の出屋は、新しい工場に移転した。調理師も二人加わって、業績はかなり良かった。 


 私生活は相変わらずボロボロで、風呂無しの安アパートに住んでいた。真っ黒い子猫を拾い、飼う様になった。動物病院で病気を持って無いか見てもらい、注射を打ってもらった。


 クロと名づけたこの猫は、甘えん坊で僕のそばから離れなかった。トイレと食事の用意が大変だったが、クロは僕を癒してくれた。


 夜の生活は寂しいものだった。


 ちょんの間の由美の店は、警察の手入れがあり休業していた。由美に二度と会う事は無かった。


 僕は新しい女を探す事にした。一般の女性は、精神障害者の僕とは、付き合わないだろう。


 川崎南町の風俗に出入りする様になる。


 風俗で働く女性は、何かしら問題を抱えていると思う。キスが駄目だと言う子がいたり、触ると露骨に嫌がる子がいたと思えば、淡々とマニュアル通り仕事をこなす子もいる。


 そんな中に「ハル」がいた。


 松浦亜弥に似た可愛い子だ。サッパリした性格でよく喋る子だ。親父が自殺して、生活に困り風俗に飛び込んだと話した。基本的に人間嫌いで、猫を飼っているらしい。


 僕は一目でハルに惹かれ、禁止されている携帯の連絡先を聞いた。ハルは良いよと言い、赤外線で交換した。


 僕はよくハルに愚痴をこぼした。精神障害の事も話した。「私も自律神経失調症なの」そう話し笑った。 


 寂しい時見たいからと、ハルを携帯の動画に撮った事もある。ハルにも僕を「のん」と呼ばせた。


 ファションヘルスなので、本番は無い。


 エッチな事をしないで、ハルに手品を披露した時もある。ハルの喜ぶ顔を見て満足した。


 母親は親父と離婚して、失踪して連絡取れないらしい。


 ハルとはしばらくすると会いに行かなくなった。

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