第112話 遠距離恋愛

 僕が、お見合い紹介会社の会員になったのがきっかけだった。精神障害の事は、隠してて活動した。


 何人も会ったが、仕事馬鹿の僕の話について行けない様だ。


 そんな時「遠距離でも良いですか」と連絡が入った。「カナ」というその子は、僕より三歳年下で愛知の豊橋に住んでいた。宝塚の大ファンで、自分もダンスを習っていると言った。


 メールで毎日話し、川崎で会う約束をした。


 新横浜駅に待ち合わせた。小柄な可愛い子だ。僕はランドマークタワー隣の、小さい遊園地の様な場所で遊んで、夕食は川崎の高級居酒屋で飲んだ。川崎のホテルを予約してあげたが、勿論エッチは無い。


 翌日、僕達は劇団四季のマンマ・ミーアを見た。


 僕が豊橋に行く事もあった。それも日帰りで。一人で新幹線に乗るのは初めてだった。


 僕は、東海道五十三次が好きだ。豊橋には、二川宿の資料館がある。二川宿は昔の面影が有り楽しかった。街中で路面電車が走っていてそれに乗った。ちょっとした一人旅だ。


 カナは仕事があり、会えるのは夜になると言った。カナに会うと居酒屋で飲んだ。 

 

 大晦日に、泊まりで会うと約束した。


 竹下桟橋から出ている、船上クルーズに乗る予約をした。船の上からカウントダウンして、正月を祝うと言うモノだ。翌日の元旦に、四季のライオンキングを見る事にした。


 カナと会い半年が経つが、僕は手も握らなかった。僕の心には、変なスイッチがある。真面目に付き合おうとすると、緊張して何も出来なくなるのだ。


 大晦日に会った時も、シングルを二部屋取った。僕はこの日、最大のミスを犯した。船上クルーズの搭乗時間を間違えたのだ。 


 夜十時出発なのに、十一時と思っていた。キャンセル料を支払い、僕たちはホテルへ戻った。何だかシラケムードだ。


 僕は考え、元旦のクルージングが出来ないか問い合わせた。席が取れた。僕はカナに内線で、明日の予定を話した。


 僕はこの日、東京駅のイルミネーションを見た時に、カナと手を繋ごうとチャレンジしていた。カナの手に触れると、静電気が走った。カナは、驚いていた。僕はタイミングを逃した。


 ホテルは、部屋が隣だった。カナを抱こうと思えば出来ただろう。自分でも訳が分からない。


 カナは翌朝、余り口を利かなかった。怒っている様にも見えるし、シラケているようにも見える。


 クルージングしている時も、あまり笑わない。カナは写真を撮られるのが嫌いだ。僕が携帯で撮ろうとすると、露骨に嫌がった。


 僕は、頑張って盛り上げようとするがいまいちだ。


 クルージングが終わると、そのままライオンキングを見に向かった。公演は面白かった。しかしデートとしては赤点だろう。


 カナを、新横浜まで送り届けた。「またね」という僕に、カナは無言だった。


 翌日、カナからメールが来た。「もう、これ以上会っても仕方ないと思う。付き合いを終わりにしましょう」と書かれていた。


 僕もこのメールに返信した。「お別れの言葉は言いません。また会いましょう」と書いた。


 しかしカナと会う事は無く、僕の遠距離恋愛は終わった。

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