第103話 解雇通告

 談話室兼食堂は、いつも患者で溢れていた。


 テレビが二台置いてあり、小説や漫画本がたくさん置かれていた。僕はそこに置かれていた聖書を毎日読んでいた。死んだらどうなるのかな?神様って存在するのかな?そんな事を考えながら読んでいた。


 ある時、僕の隣に二人の患者が仲良さげに話していた。いきなり一人が話していた男を殴り始めた。


 僕は突然の事に驚き、大声で職員を呼んだ。


 殴られた男は、鼻血を出し血まみれになった。殴った男は、職員四人に取り押さえられ、注射を打たれるとすぐにぐったりとおとなしくなり、動かなくなった。


 何が原因か分からないが、間違いなく隔離室行きだ。暴れたり、言う事を聞かない患者は、薬でおとなしくさせて、最悪廃人にしてしまうのだろうか?


 精神病院は、入院治療をして体を休める場所では無い。社会から隔離して、身柄を確保し、犯罪を犯す可能性のある者のたまり場なのだと思った。


 僕は、今後の身の振り方を考えていた。まだ日の出屋に戻りたい気持ちが残っている。


 ある日、兄から一通の手紙が届いた。何かの書類が入っていた。


 「全会一致で、龍神昇の専務の職を解き、日の出屋を解雇します」


 そう書かれた書類を僕は破り捨てた。僕にはもう帰る場所が無い。 


 この病院で自殺しようと決めた。首吊りしか思いつかず、場所とロープを探した。場所は病棟裏の非常階段に決めた。しかし肝心のロープが見つからない。僕は、八十キロの体重がある。丈夫なロープでなければ切れてしまう。


 病院側も、自殺者が出ない様に管理監視を厳しくしている。


 布団にくるまり、じっと機会が来るのを待った。

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