第52話 引退
バスケット部は順調に力を付けていた。
練習試合でも格下の相手だと、控えのバスケット未経験者を出し鍛えた。試合に初めて出た後輩が緊張の余りリバウンドを取り、自分のゴールにシュートする珍事を犯した。幸いシュートが外れ、事なきを得たがとんだ笑い話だ。
本人は、頭の中が真っ白になったと言っていたが、そんな奴が試合に出て来るチームに負けるのは屈辱だろう。
僕達は川崎でベスト8くらいの力を付けていた。
高校三年になると、僕はバスケットに身が入らなくなっていた。キャプテンの永野が心配していた。僕は、将来の希望を持てないでいた。
日の出屋支店は僕が継ぐのだろうか?親父は肝心な話になると、言葉を濁し違う話に変えてしまう。バスケットに逃げている気がして嫌だった。真剣に相談出来る人がいなかった。
夏、高校最後のインターハイは一回戦で接戦の末敗れた。結局春の公式戦で勝ったのが最初で最後となった。
森から聞いた話だが、僕に川崎選抜のメンバーに選びたいと言う話しが顧問の先生に来たらしい。顧問の先生が昇は勉強が出来ないので駄目ですと断ったと言う。
僕は川崎選抜に参加したかった。川崎商業の代表として。悔しさをかみしめた。
バスケット部を引退した後も僕は、鈴木コーチのアシスタントをして関わる事になる。
応援団も野球部が甲子園予選に負け引退した。新聞の川崎欄に、川崎商業の応援団の様子が記事になり載っていた。地元で応援団は有名だった。
僕はどうしていたかと言うと、仕事に興味が無く親父を困らせていた。
高校を卒業したら、調理師の免許を取る様に勧められた。調理師の専門学校に行く事に決めた。
僕は働き詰めの毎日に嫌気がさしていた。仕事は年中無休で、日曜日も祭日も無い。それも二十四時まで開けていなければならない。
周りの友達は、学生生活をエンジョイしているというのに。何のために生きているのか。
僕は自殺を考えていた。
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