第29話 異性とは付き合えない
親父の命令で僕は、一人で支店をやる事になった。
僕の仕事は支店の終わり時間、二十四時までやる事になった。完全に労働基準法違反だし、虐待されている気分だ。親父に抗議した所で、逆切れされ殴られるのが落ちだ。僕は高校に通い続けたい一心で、親父の命令に従った。
僕の高校時代は、足を痛めた事で予定が狂ってしまった。二十四時までの仕事は想定外だった。
バスケットは、まだ出来なかったが、応援団の練習には参加していた。
授業の休憩時間に、隣のクラスにいる森が僕を呼びに来た。
いきなり「昇、お前彼女欲しいだろう。紹介してやろうか?」とニコニコしながらこっちを見て言った。僕は自閉症的な部分もある。
「俺はそういうの苦手なんだ。土曜日も日曜日も仕事だし、デートとかする暇も無いから」
一緒にいた女の子に「えーっそうなの?つまらない」と言われたが、僕は自分のクラスへ戻った。
しかし、僕の気持ちは違っていた。彼女も欲しいしエッチもしたい。
ここで中学までの出来事が、フラッシュバックした。話す言葉が通じなくて、辛い思いをどれだけして来ただろう。
僕のみつくちは子供に遺伝すると思っていた。生まれて来る子供には、僕と同じ様な思いをして欲しくない。だから子供は作らないし、恋愛もしないと決めていた。
放課後、森が来て「昇の事好きだって言う子がバスケット部にいるんだよ。話しだけでも聞いてあげなよ。嫌なら断れば良いんだし青春しようぜ」
僕はそれでも断った。
僕は、自分に自信が無いのだ。生まれてこのかた、女の子と手を繋いだ事もなく、話をした事も無いのだ。
スピーチエイドを使用している事を、他人に知られるのは恐怖だった。僕の前歯三本は、変形した部分が虫歯になり、それを抜いて部分入れ歯にしていた。
笑うと入れ歯だと分かる為、僕は小学、中学と全く笑わない人間になっていた。
そんな僕に、彼女なんてとんだお笑いぐさだ。僕は生まれて来た自分を、恨み憎んでいた。
僕に好意を持っていると言う女の子はしばらくして分かった。佐藤悦子。えっちゃんと呼ばれていて、身長が高く細身で可もなく不可もなく普通の女の子だ。僕は付き合う気が無いので、相手にせずやり過ごしていた。
それよりも早くバスケットがやりたかった。
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