第30話 倒産、そして・・・
大谷うな重が倒産したと連絡を受ける。
うなぎの仕入れが出来ない。
うなぎ販売最終日に、水槽で育てていたうなぎを解体して、みんなで一緒に食べた。僕はうなぎの頭を兜焼きにして食べた。可哀想だったが、とても美味しかった。
親父はうなぎに見切りをつけ、次の商売を模索した。親父は、メーカーを連れて来て釜飯を始めると言った。
米から作るので二十分位かかる。釜飯の機械は、一度に六人前しか出来ない。
同時におでんも始めた。本店は兄に任せ、親父が支店に戻って来た。
釜飯は作るのが難しかった。
生米から作るので、研ぎ立てだと芯が残る為、キチンと浸漬しなければいけない。炊きあがりの蒸らし時間が僕には分からなかった。
店の看板も変えた。釜飯はかなり本格的に作ったので、とても美味しく評判も良かったが、待ち時間が長すぎる。待っている合間におでんを勧めた。
店が混んで来ると、待ち時間は更に長くなる。一度に六人前しか作れないのだから、後から入って来るお客さんは、一時間以上待つ事になった。
親父は、ここで禁じ手を使う。生米から炊いていた釜飯を、炊きあがった米に変えたのだ。これではただの混ぜご飯だ。
作る時間は十分以下になり効率は良くなったが、お客さんは敏感に反応した。美味しくなくなったとリピーターが激減した。
もう後戻り出来ない。
親父は途方に暮れていた。釜飯は儲からないと言って、親父はもう次の商売を探していた。
変わり身の早さに僕も舌を巻いた。
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