第15話 離婚成立

 日の出食堂の支店の二階に、親父と千代子が夫婦の様に住んでいた。


 二階は三部屋あり、僕ともう一部屋は貸していた。風呂無しの共同トイレだ。風呂は店の一階の奥にある。週一回の風呂は僕が準備した。


 ある日、僕が学校から帰ると親父が嬉しそうに「やっと正美との離婚が成立した」と言った。母もまさか自分の連れて来た千代子に親父を取られるとは思わなかっただろう。


 母とは何年も会っていない。僕の心は、母親の愛情を受けないで育ったので、歪んでいるのだろう。


 中学では部活以外、相変わらず全く口をきかなかった。仕事の疲れもあり、教室の机にうつ伏せになった。


 期末テストの時だけ、前日の仕事を免除された。


 中学二年の通信簿の成績は、五段階でオール四だった。クラスでは四十二名中、十二番だった。バスケットと仕事しかしていないわりに、まあまあの出来だと思った。


 再来年は、高校受験が控えている。目標は、兄の通っている川崎商業だ。人気のある倍率の高い高校だ。


 中学三年になると、親父が僕に勉強の時間をくれなくなった。バスケットもレギュラーになれたのに、肝心の試合には仕事で行かせてもらえなかった。


 試合に行かない僕をヤーさんは怒り、バスケットを継続するか、辞めるかどちらかにしろと言った。


 バスケット部のメンバーがぞろぞろと支店に集まり、僕に辞めない様に説得しに来た。


 親父と交渉して、二十二時まで仕事をする事を条件に、試合に行っても良いという事になる。


 僕が、バスケットを継続するとメンバーに伝えると歓声が上がった。チームは弱かったが、みんなと一緒にバスケットが出来るのが嬉しかった。

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