第14話 いかさま

 親父は、恵美がいた時から、いかさまをしていた。


 焼肉は、一人前百グラムだ。


 それが二人前になると、百八十グラムに減らすのだ。注文が多くなればなるほど、見た目わからないように肉の量を減らしていた。


 恵美がいなくなってからも、親父は肉の量を減らし続けた。余りにもひどいので、親父に「肉の量が少ないし、お客さんが来なくなるよ」と僕が言うと「何生意気言いやがって!黙って俺の言う通りやれ!」僕は、親父に平手打ちをくらい、それ以上何も言えなかった。


 在庫の肉も、回転率が下がり変色した。


 親父は「塩で肉をもみ水洗いすれば、まだ食えるから大丈夫だ」と言って、お客さんに出した。


 僕は、いかに新鮮で美味しい物をお客さんに提供し、喜んでもらえる事が商売だと思っていた。


 親父の基準は、傷んでいるか食べられるかだ。「戦争中は何でも食べたのだ」と親父は言うが、そんな考え今時誰にも通用しない。


僕は、暴力的な親父のいう事に従うしかなかった。

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