第11話 異母兄弟姉妹

 この頃に、親父が日の出食堂の支店を出すと言い出した。


 支店は、本格的な焼肉屋にするとコリアンタウンの有名な店に交渉して、全てのメニューのレシピを手に入れた。ビビンバ、クッパ、ユッケなど僕の初めて聞く商品が並んだ。


 日の出食堂の本店は、姉と兄が担当する事になり、支店は親父と僕が担当する。


 それと同時期に、親父が十九歳の可愛らしい女性が住み込みで働くと連れて来た。恵美というこの女性は、とても人懐っこく話し上手で僕はすぐに好きになった。


 「お前の姉さんだ」親父が言った。


 妹の美沙の時よりも驚いた。僕には、腹違いの兄弟姉妹がいたのだ。


 詳しく聞くと、親父は過去三回結婚していて、初めの女性とは子供が出来ず離婚。二人目の女性とは五人の子供がいて、その末娘が恵美だった。僕の兄弟姉妹は四人だから合わせると、九人の大兄弟姉妹だ。


 恵美は、支店で働く事になる。オープンした時から、支店は大盛況だった。店は四人がけのテーブル席が四つと、カウンター席が六席ある。


 恵美の人気が凄かった。


 皿洗いが僕の仕事になった。僕は、二十一時まで働くように親父に言われた。学校から帰ると、十六時に支店から電話で早く来いと連絡を受ける。


 支店は、本店から歩いて十分の場所にある。支店に着くと、前日使用した汚れた焼肉の網や、皿が山積みになっていた。それを黙々と二十一時まで洗い続けるのだ。親父は、


「昔はみんな小学生でも働いたのだ。食費や学費とか自分の生活にかかる金は自分で稼ぐのが当然だろう」


 事あるごとに言われた。学校の宿題もやらせてもらえなかったが、成績は上位の方だった。


 恵美は、とても優しく男性客を虜にした。何人もの男性に、交際を申し込まれていたが、のらりくらりかわしていた。


 僕は、学校と店の仕事で、毎日ヘトヘトだった。木曜日の定休日も無くなり、年中無休になっていた。


 小学校では相変らず口をきかない僕に、担任の先生がしびれを切らし、放課後に呼び出した。


「何でも良いから話をしよう」


先生が優しく問いかける。

 

 僕は、スピーチエイドを見せ、発音がきちんと出来ないことを告げると、先生は絶句してしまった。


 これは大変な障害だと言って、僕をかばってくれた。

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