第8話 日常の出来事
僕の母は、精神病院に入院して家にはほとんどいなかった。家に帰って来ても母は、宗教にのめり込んでいて毎日、朝夕の勤行を必要以上に行い、ご仏壇に供えているお水を聖水だと言い、精神科の薬と一緒に飲んでいた。
僕は、お母さん子だったので、母が家にいる時は傍について離れなかった。母の熱心に行っている勤行も一緒にやった。精神病院に母の友達が入院しているので、スーパーで大量にお菓子を買い、頻繁にお見舞いに出かけた。勿論僕も一緒について行った。
他の兄弟姉妹は、母に興味が無いらしく、いつも見て見ぬ振りをしているようだった。
夜になると、毎日のように母と親父は喧嘩していた。寝ていると、親父の怒鳴り声と、平手打ちする音と、母の悲鳴の様な声が家中に響いた。
母は、精神病院に入院している方が楽しいとよく言っていた。入院したくなると、ワザと狂ったふりをしているそうだ。
ある日、退院してきた母が一人の女性を連れて来た。同じ精神病院に入院している、統合失調症の千代子と言う母より少し若い人だった。
母は千代子と、とても仲が良く、行く場所が無く可哀想だと連れて来た。千代子は、病状が良く落ち着いて明るくよく笑う女性だった。
親父は、千代子を家に住めるようにしてあげた。
しばらくすると、母は体調を崩し精神病院に入院した。千代子は、親父のお気に入りとなり、体調も良く精神病院にお世話になる事もなかった。
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