第5話 調理デビュー
僕が小学校にあがる時、一つの問題が起きた。
僕がみつくちの障害者で、言葉を発しない事を懸念して、問題児や障害者を集めて指導する特殊学級への勧めをしてきた。
親父は猛烈に反対して、普通の学級に入れる様に抗議した。僕は、簡単なテストと発音の障害の程度を審査され合格する。
普通学級に入り、ここからが本当の地獄が始まる。保育園時代と同じ様ないじめにあう。僕は、出来るだけ人との接触を避け、いつも机にうつ伏せになり一人でいた。
優しく声をかけてくれる友達もいたが、僕はスピーチエイドに慣れなくて一人苦しんでいた。
家に帰ると食堂の手伝いが待っていた。日の出食堂は、閑古鳥が鳴いていた。
それでも親父は、必死に売り上げを伸ばそうとしていた。僕が家に帰ると、親父はいろいろな仕事を教えた。
練炭の火を入れるのが僕の仕事になった。焼き鳥の肉を串に刺す事もした。
親父は、焼肉をやろうと言い出した。定食のメニューはそのまま残し、焼肉のメニューが増えた。
僕のやる仕事も増えた。小学三年の時には、ラーメン、チャーハン、かつ丼、親子丼、カレーライス位は作れる様になっていた。
ある時、僕が一人で店番をしていたら一人のお客さんが来た。僕は「いらっしゃいませ、何にしますか」と言うと、怪訝な顔をして「ラーメン」と言った。
当然だろう。小学三年の子供が一人で店番をして、しかもラーメンを作ろうとしているのだ。僕は僕で、初めてお客さんにラーメンを作るのだ。親父から教えられた通り調理した。
「お待ちどうさまです」
出来ばえは、可もなく不可もなくという感じだ。お客さんはラーメンを完食すると、代金を支払い帰って行った。
この日のラーメンを作った事だけは、今も鮮明に覚えている。
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