第2話  生い立ち

僕の名は龍神昇。


 五十二歳で結婚歴が無く、二十七歳で統合失調症を発症して、七回の精神病院の入院歴がある。身長百七十八センチ、九十五キロ。


 若い時は痩せていたが、抗精神薬を服用するようになり激太りした。

 

僕の普通の人と違うのは、生まれつき口唇口蓋裂といういわゆる「みつくち」と呼ばれる奇形を持って生まれた事だろう。僕の場合、喉がパックリ割れて喉ちんこが無い状態だった。前歯も変形して、三本が短く曲がって一本だけ正常だった。


 親父が、僕の生まれた時の状況をまるで狼が泣いているようで、鼻は潰れているし口は裂けているし大変な事になったと思ったらしい。


 本来、口唇口蓋裂で生まれた子供は、無料で国が保護してくれ、小学生に上がる頃には、鼻も唇も綺麗に手術してくれるそうだ。僕の場合、親父にその知識が無く手術はしなかった。


 その代わり、スピーチエイドと呼ばれる喉ちんこの代用となる装置を口の中にする事になる。イメージとしては、総入れ歯に針金を付けその先にプラスチックの様なモノを丸く加工して、喉ちんこの位置にそれが入る感じだ。


初めてスピーチエイドを装着した時は、喉が苦しくて泣いた。親父からずっとこの装置を使い続けなければいけないと、告げられた時ほど辛い事はなかった。


 保育園に入園すると、僕はすぐにいじめの対象になった。鼻から息が漏れてしまう為、何を話しているか相手に伝わらないのだ。鼻を指先で潰しながら、僕の喋り方をまねるのだ。


毎日辛くて保育園に行くのが嫌だった。僕はコミュニケーションの取り方を知らない子供になっていった。僕の遊び相手は、外の雑草に隠れているトカゲや丸虫だった。一日中誰とも話をしないで黙ったままの子供だった。


生まれてこなければよかった。死にたい。この頃から自殺願望が目覚めていた。

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