人間のカケラ

龍神 昇

第一部 不幸の始まり

第一章 何故産まれたのか

第1話 今の僕

ここは精神障害者の通う作業所と呼ばれる石鹸プラントで、小学校の給食調理などで出る廃油をリサイクルして、石鹸を製造販売している。


社会復帰を目指し、僕は毎日この作業所で汗を流している。「タンポポ」と呼ばれているこの施設は、就労で無い為僕は今無職という事になる。


最初の一か月は、お試し期間となり週一の通所で時給三百円。そして二か月目、採用が決まれば週二回の通所になり時給四百円になる。通所する曜日は、自分の好きに決められる。そして六か月経つと、時給五百円になり月曜日から木曜日まで四日間通所する事が出来る。一年経つと、時給六百円になりこれが上限となる。


その他、混合と呼ばれる石鹸の原料をちぎる作業と配送の助手は時給が百円アップする。作業時間は、朝九時半から午後二時まで。実労働時間は三時間半が基本だ。


毎週金曜日は、レクレーションやミーティングがあり、レクレーションは充実していて、作業所が負担して映画を百円で鑑賞出来たり、デイズニーランドに千円で行けたりする。毎月の誕生日会も、金曜日に行われ参加費二百円で誕生日の人のリクエストで、豪華な料理を施設で作り参加者で祝い食事をする。月末の金曜日だけ作業の日と決まっている。

作業所に通所しているのは十五名程だが、生活保護を受給している者も多い。工賃が一万五千円を超えると、その分生活保護から差し引かれる為、通所日を計算している人がほとんどだ。


生活保護を受給していない人は、親と同居していて家賃がかからないなどの理由がある。僕の場合は、兄の所有するワンルームマンションに無料で住んでいる為、生活保護を受給していない。作業所の賃金と障害年金で、ギリギリの生活をしている。


みんなそうだと思うが、精神障害者に認定された時の絶望感は、言葉に表す事が出来ない。大量の向精神薬を服用して副作用もある。症状の悪い精神障害者は、家に引きこもり一日中寝たきりの者も多いと聞く。


僕も今通所している作業所が無ければ、まだ家に引きこもり最悪自殺していただろう。いろんな福祉センターの方々にお世話になり、僕は今何とか生きている。


「タンポポ」は川崎で活動しているが、川崎で一番作業がハードで、工賃が高いと福祉の中でも有名だそうだ。



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