あなたがいるから
@shunkoo
第1話
暗い夜道がまっすぐ伸びている。
この辺りは街灯が少なく、もの寂しい雰囲気が漂っている。
一直線のその道は永遠に続いているようだ。
唯一、道の脇の線路を電車が通る時だけ、この独特な空気から解放される。
「はあ。今日も疲れた。」
そういうと1人の女性がはあっとため息をつく。
彼女の吐いたため息は煙のように白く、夜の寒さを物語っていた。
女性のはベビーカーを押し、ベビーカーには2歳程の男の子が時折通る電車をゆびさしながらはしゃいでいる。
「ママ、電車。」
男の子はベビーカー越しに女性に話しかける。
「そうだね。」
少し微笑みながら女性が返すが、心ここに在らずといった様子で、ぼんやりと前をみつめている。
自宅へ帰ると女性はソファーへどさりと寝転ぶ。
男の子は自身のおもちゃで遊んでいる。
男の子をぼんやりと見つめながら色々なことを思い返す。
旦那と喧嘩したこと、仕事でのトラブル、育児と仕事、どちらも中途半端になってしまう現実。
こんな毎日がずっと続くのだろうか。
そう思うと自然と涙が溢れてきた。
「子供の前で泣くなって怒られちゃうね」
そう呟くと、余計に涙が溢れて来る。
ゴールの見えない真っ暗な道をただ歩いている。
そんな感覚に陥ることがある。
見えない何かに押しつぶされそうになり、徐々にがんじがらめになっていく。
気付いた時にはもう、暗闇の中動くことが出来ない。
「ママ大丈夫?」
気がつくと、彼女の目の前に男の子が立っている。
彼の小さな手は彼女の頭をポンポンと優しく撫でている。
ふふっと彼女は小さく笑う。
彼女は体を起こすと、男の子の頭の上に手を乗せる。
「大丈夫。ありがとう。さ、ご飯食べよっか。」
「うん。」
あなたがいるから @shunkoo
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