第四章「彼の告白、私の愛」
それから一ヶ月が経った。
穂香は、最愛の人の死を胸の奥に締め、淡々と高校生活を送った。
だけど、休学しなければならない程、更にあまりにも衝撃な出来事で、精神的に和誠の死ときちんと向き合えることができなかった。
それ程だ。
それ程、彼を愛してる証拠だ。
だけど、父に大否定された。
それから、自殺まで考え、それでも死ななず、自虐行為を行うようになった、何度も、何度も…。
「い…嫌だ、やめて。来ないで!!」
『お前に対しては、ものすごく失望したよ。連続犯罪者のそいつを好きになるとはな…』
父の否定論。完璧主義者。
『穂香、平気よ。大丈夫だから…』
母の慰め。優柔不断だけど、優しい人。
「だから言っただろ!?穂香は、そいつにどのような事を散々されたのか…お前は知ってるのか!?」
「あなただって、そうじゃありませんか?自分の一人娘だからって、過保護です!!」
毎日、繰り返される夫婦喧嘩。
それに耐えられず、両親の許可を得て、穂香は一人暮らしを始めた。
「やっと…だよ?和誠さん」
小さく優しく呟くように、亡くなった彼に話しかけるように呟いた。
見えない。聞こえない。
でも、傍にいるのは分かっていた。
温度で、何度も感じる暖かさ。
それが今になって、全て思い出となった。
優しく、暖かく、それから、切なく交わす幾度もの夜。
それでも、二人は愛し合っていた。
「なんで…?なんで、最後まで…いてくれなかったの…?」
『ごめん…、穂香』
「和誠さん…?」
『だから、許してくれ』
微かに伝わってくる彼の温もりに、穂香は、思わず泣いてしまった。
そして、重い病気に罹った。
それから、毎日のように襲ってくる恐怖と不安が、幻覚や幻聴…様々な症状として現れるようになった。
地獄だった。更なる過酷な試練だった。
毎日、泣いて、泣いて、泣き止んだ途端に深い眠りについた。
これでまた光を失った。
彼の最後の遺言。
そして、最後のキスが…穂香を愛している証拠だ。
それから、いくつもの薬を飲むようになった。けど、無駄だった。
精神科。心理カウンセラー。
何度も通院した。
やっと元に戻った途端に、涙が溢れ出した。
それは、和誠からの最初で最後のラブレターだった。
父とは友人であったのは、和誠の葬式で、ふいに聞こえた。
そして、涙を流す和誠の母から、和誠の遺書(ラブレター)を直接渡された。
彼の葬式は、一ヶ月後に行われた。
その時の彼は、本当に素敵だった。
そして、愛していた。ものすごく。
『穂香へ
この手紙は、ラブレターということだ。
つまり、君と暮らした時から書いたやつだ。
告白…されたことなかったんだな?知らなかったよ。すまない。
好きだ。誰よりも、愛してるよ。
だから、俺を忘れてくれ。
幸せになってほしい。
それが、君への願いだ。
いつまでも、穂香を見守ってるから、安心しろ!
また、会えるといいな。
穂香、さようなら。
また巡り会えたら、いつか本音を伝えるよ。
最後に、ごめん。
あんなに酷い事して…。
辛かっただろ?
苦しかっただろ?
痛かっただろ?
全部、知ってたんだ。
それは…俺が、異性に対する愛情表現だ。
許してくれ。
すまない。
幸せにさせてくれて…ありがとな。
和誠』
涙を流しながら、嗚咽した。
最初の恋、最後の愛。
あなたを忘れないから。
幸せになるから。
ごめんなさい。
和誠さん。
幸せになれたら、また、報告するね。
ありがとう。
さようなら。
~終わり~
少女の過去編-囚われ、壊された毎日- ドーナツパンダ @donatupanda
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