第252話:幕間 三角耳の娘ー3

 まったく、まったく。全く困った奴も居たものみゃ。


 恋人に酷いことをされて、怒るのは分かるみゃ。当然みゃ。

 でも相手が王子と分かっているなら、それだけを殴るなり殺すなりすればいいと思うみゃ。こうでもしないと、それが叶わなかったわけでもないみたいだしみゃ。


 要するに、ウチに関わらせないでほしいみゃ。

 だいたいこんなことをして、その人も喜ぶのかみゃ?

 ウチがその恋人で、死んでもこっちのことが分かるなら、全然嬉しくもなんともないみゃ。


 そんなことをしてないで、また何か面白い物でも探しに行けとでも言いたいみゃ。ウチの墓には、干し肉の端っこでも放り投げといてくれたらいいみゃ。


 ……っと、着いたみゃ。

 もうこっちの戦闘は、すっかり終わってるみたいみゃ。倒れてる死体をひっくり返したりして、事後検分なんかもやってるみゃ。


 おや、こっちは首都に移送かみゃ。

 サマム伯と――ちっ、ディアル候みゃ。ディアル候を見ると、何だか微妙な気分になるみゃ。


 ウチが襲われたのは、追跡相手じゃなくて別の奴だったみゃ。だからきっとディアル候側の誰かが気付いて、捕まえに来たんだと思ってたみゃ。

 でもアビスに聞いたら、そうじゃなかったらしいみゃ。

 また機会をあらためてどうにかしてやろうと思ってたのに、肩透かしを食らった気分みゃ。


 おかげであいつは、いまだに寝込むはめになってるし。いい迷惑みゃ。相手が変わっても、このお礼はじっくりさせてもらうみゃ。

 ん、あいつ? あいつって誰みゃ?

 ――ふん。我ながら、よく分からないことを考えてしまったみゃ。


 ともあれこれで、西側の戦闘は王軍の勝ちということみゃ。

 被害もそれなりにあるみたいだけど、これが東の戦闘に加わったら、さすがに辺境伯もどうしようもないみゃ。


 よし。大体は見たし、団長のところへ報告に帰るみゃ。






 ……んみゃ。ワシツの爺さんは苦戦してるみゃ。まあ数で負けてて、種族差もあって、これだけ食い止めてたらそれはすごいことなんだろうけどみゃ。

 正々堂々ととか言ってるから、そんなことになるみゃ。


 しかし団長たちが見当たらないみゃ。ここにも臭いはあるけど、移動したみたいみゃ。


 とっとと行くみゃあ──って。

 ちょっと待つみゃ。

 そんなのありかみゃ。ハンブルの戦争に、そんな本気で構う奴があるかみゃ。


 これはやばいみゃ。

 団長、すぐ行くみゃ!




「トンちゃんお帰りにゃ。おみやげはあるかにゃ?」


 あるわけないみゃ。ちょっと団長、聞いてほしいみゃ。


「おみやげみゅ!? メイも欲しいみゅ!」


 だからそんな物は、ないって言ってるみゅ。


「あ。トンちゃん、お帰りなさい。おみやげを用意するなんて、さすが余裕が──え、え? どうしたんです!?」


 うるさい、あっちへ行ってるみゃ。さもないと、目玉を抉りだすみゃ。


「トンちゃん、いつもながら過激だにゃ」


 人聞きの悪い、そんなことないみゃ。ウチはいつもお淑やかみゃ。


 いや、だからそうじゃなくて、やばいのみゃ。

 ギールが獣王化インフィルしてたみゃ!


「獣王化にゃ──?」


 そうみゃ。嘘でも見間違いでもないみゃ。


「トンちゃん、メイ。みんなを集めるにゃ。死にたくなかったら、すぐに来るように言うにゃ!」

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