駅のホームにて

春野ハル

第1話 駅のホームにて

その日も僕は寂れた駅のホームでスマホをいじりながら電車を待っていた。片方の手をポケットに入れる。きっとこの行動は冬の寒さからだけのせいではないことを僕は知っている。

別れた彼女のことに想いを馳せる。彼女はすごく優しい人だった。優しくて温かくて、でも残酷だった。

「あなたと別れたいの。」

別れを切り出されたのは突然だった。久々の彼女とのデートで浮き足立っていた僕は、まるで天から地へと落とされたような衝撃を受けた。何か言おうと口を開いたが、何も言葉が出てこなかった。

「あなたといることに疲れてしまったのよ。」

その言葉に僕は笑うことしかできなかった。どうすればいいのかわからなかった。

彼女とは色々なところへ行った。公園、ショッピングモール、映画館、動物園。いずれの場所でも僕たちは手を繋いでいた。

手をポケットから出すと、どうしても彼女の手を握りたくなってしまう。だから僕は今日も、自分のポケットの中に手を入れる。

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駅のホームにて 春野ハル @Leaf123

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