第3話



神威は目を覚ますと真っ暗な部屋に閉じ込められていた。



神威

(ここに唯さんがいるのか!?)



ラリゴ

「ぉお〜いいねぇ。もっと近くで見せてくれ」



神威

(まさか唯さん?)



僅かな隙間から部屋の外を見てみる。


良く見えないが女の人が裸でラリゴの前に立っている。


だけど唯さんではないみたいだ。



ラリゴ

「ほれ…ほれ…」


ラリゴは女の体を触り始める。



その度女はビクビク震えながら堪えている。



「おい……ゴリラ…。その辺にしたらどうだ。頭の中も猿みてーだな。」



ラリゴ

「あぁ。まだそんな元気あったのか。まだお仕置きが足りないのかな?」にや



ラリゴは顎で兵隊に合図をすると兵隊は鞭で唯の背中を打ちつける。



「あぁ!!」



神威

(唯さん!!糞‼︎あいつら許さんぞ!だけどこの数勝てるのか?ざっと200人はいるぞ…)



パチン!!

「っあ!」



ラリゴ

「お前が俺の指を噛みさえしなければ誰よりも可愛いがってやったのになぁ。そうだ!歯を全部抜いちまえばもう噛めないよな?そしたら俺のブツをたっぷりくれてやるからな!ハッハッハッハッハ!」



神威は静かに霊器を出しロープを解く。



ひゅ〜。



(風………。神威!?)



唯は少しだけ微笑む。



「やるじゃない…あいつ。」



ラリゴ

「あ?聞こえねーよもっとでけーこえで言えよ!」



「死ねよ…脳ミソ猿野郎が!!」



ラリゴ

「どけ…俺がやる。」



ラリゴは鞭を持ってる兵隊を跳ね除け鞭を全力で振る。



ラリゴ

「二度と生意気な口聞けねー様にしてやるよ!」



神威

(いける…いける。風の斬撃をイメージしろ)



今だ!!!



スパン……。



ごとん。



ラリゴが振るった鞭がストンっと落ちた。


同時に唯を縛っていたロープも切れた。




ラリゴ

「何だ!?誰がやりやがった!!」



神威は部屋から飛び出す。



神威

「唯さん!!」



走りながら唯に合図を送る!




「期待してなかったけど…早かったわね❤︎」




「海月鞭(ジェリーウィップ)」



見えない触手を周囲に這わせ雷を出す。



「雷這(らいばい)」



兵隊達が次々に倒れて行く。



ラリゴ

「っち!てめーら怯むな!」



次々兵隊達が押し寄せて来る。



神威

(次は…次はー。広範囲に突風かな!唯さん技に名前付けてるから俺も付けた方がいいのかな。)



神威

「剛風」



ぶおん!!



更に兵隊の数が減る。



「ちょ…ちょっと!!私の事も考えてる!?」



神威

「すいません!考えて無かったです!」



ラリゴ

「くそ!なんなんだこいつ!ん?そういやさっきのガキじゃねーか!」



神威

「こう見えて25なんだけどなー。」



ラリゴ

(さっきの時とは随分雰囲気が違うな…それにこの霊力の高さ…。)




兵隊達

「や、やべぇ俺たちじゃ無理だ…に、逃げろ〜!」



ラリゴ

「ッチ!使えねー野郎共だ!ウタン‼︎」




ウタン

「はい…」



ラリゴ

「お前はあの女を殺れ」



ウタン

「かしこまりました。」




ウタンは唯の方へ歩いてく。




「あんたには仮があるからねぇ。」


唯はウタンを睨みつける。



ウタン

「何の事やら〜」


不吉な笑みを浮かべる。



「容赦しないよ。」



ウタン

「クックック…。」



「何がおかしい。」



ウタン

「今の貴方に勝てるんですかー??海王神をも手なづけた海の女神…セイレーンは貴方ですよね?」



「何の事だ?さっぱり分からん。」



ウタン

「今では一層で生きていくのが精一杯って感じですね。さぁ行きますよ!」



「霊器・菌鼯鼠」



シュッ!!



ウタンは手裏剣を飛ばす。



「それくらいなら造作もないわね。」



唯は顔を右に倒して躱す。




ウタン

「これならどうですかね?」にや



シュバババ!



多数の手裏剣を華麗にかわしていく。



ウタン

「やりますねぇ。流石…元セイレーン。いやマスターⅫ(トゥエルブ)。」



(こいつ何なの?マスターⅫは20層以下の者は耳にもしないはず…。)


ウランは指笛を鳴らす。



ドドドド。



「っん!」



後ろの壁に刺さっていた筈の手裏剣が戻って来たのだ。




ウラン

「いい〜顔ですねぇ。」



「まさか遠隔操作とはね。」




ウラン

「こんな事も出来るんですよ?」



再び指笛を鳴らす。



唯に刺さっている手裏剣が刺さったまま回り出す。



「んああ!!」



神威

「唯さん!!」



ラリゴ

「余所見してる場合じゃねーぞ!!」



ドゴーン!



ラリゴは手前の巨大な斧を振り回す。



神威

(遠距離から攻めるしかないな。)



「風刃の太刀」




ラリゴ

「っ!!うお!」



ラリゴは斬撃の刃を斧で受け止める。



ラリゴ

「んぎぎ!」



神威はすぐに背後に回りもう一度斬撃を放つ。



ぐあああ!



ラリゴ

「貴様…!!」



神威

(あれ?なんか俺強い??)



神威はとどめを刺す。



さっきより大きい風刃の太刀を放つ。



ラリゴ

「霊器・剛鉄腕」



斧が変形し腕に纏う。まるでゴリラの丸太腕だ。



ラリゴ

「攻防一体の奥義だ。そのチンケな刃は今の俺には通らない。」



バシン!



ラリゴはあっけなく風刃の太刀を弾く。



神威

(なんだって〜??それより唯さんは大丈夫かな?)



神威

「唯さん!?」



唯は倒れていた。



「…う…体が動か…ない。」



ウタン

「この手裏剣はムササビなんですよ。ムササビの口には病原菌が沢山ありましてねぇ。ウヒヒ。つまりあなたは感染病にかかった訳です。」



「さ…さと殺せば?どーせ感染病とやらはすぐに死なないんでしょ?」



ウタン

「滑稽、滑稽。実に滑稽ですよ!!ウヒヒ!!」



「あんた…私を殺したいんでしょ?だったら病原菌とやらじゃなくて直接殺したら?」



ウタン

「放って置いても死にますから…」



「確かに陰険そうな顔してるわ…ただ意気地がないだけかも知れないけどね。ふふ」



ウタン

「そんな状態のあなたに何を言われても無様にしか見えませんねぇ。」



「なら最後に一言いいかしら?」



ウタン

「ウヒヒ…。何でしょう。」



「そのチン毛みたいな髭…どうにかならないかしら?」



ウタンは急に顔つきが変わった。



ウタン

「貴様ー‼︎今すぐ殺してやる‼︎私の髭を侮辱するなー!!!」



ウタンは唯の元に走ってく。




神威

「唯さん!!ごふ!」



ラリゴ

「そんなにあの女が気になるか?」



神威

「くそ…スキがない。唯さんは!?」




「ありがと…こっち来てくれて。」



ウタン

「あががががが!!」



バチバチ…。


唯は麻痺して触手の範囲が狭まったため近くまでお引きよせ、感電させた。



「後…私。病原菌とかじゃ死なないから♪麻痺したりはするけど自己再生出来るのよ…クラゲの様に。」



神威

(良かった…大丈夫そうに見えないけど勝ったみたいだね。後はコイツか。)



ラリゴ

「ウタンの野郎…。」



神威

「これでお前一人だ…。」



ラリゴ

「お前…俺に勝てると思ってんのか?」



神威

(どうにかしてスキを作んないと。そもそもこんなところでモタモタしてる場合じゃないんだよ!けど遠距離じゃちと厳しい…火力が足りない。切り込むしかない!!)



神威は風刃の太刀3連を揺動に一気に切り込んで行く。



ラリゴ「フハハハ!!近接で俺に勝てると思ってんのか!?」




神威

「………。」

(俺が思うに…俺の能力は風を生み出す能力。一瞬でも奴の動きを止められたら、俺の勝ちだ。…出来るか分かんないけど…いや!やるんだ!!)




ラリゴは風刃の太刀三連をいとも簡単に弾く。

神威は近づきながら更に三連。



ラリゴ

「何度無駄と言えば分かる!!」



弾き終わると同時に神威は懐にたどり着く。



ラリゴの足を※長剣アウラで斬る。


※短剣のアウラに風の刃を纏って刃渡りを伸ばした形状。



ラリゴ

「っち!だが惜しかったな!死ね!」



「猿槌(コングストンプ)」



「神威!!!」



ラリゴは両手を合わせて振り下ろす!



神威

(今だ!!)



「烈風掌破(れっぷうしょうは)」



神威は左手を突き上げ猿槌を風力で相殺させた。



重く、力強いラリゴの腕はふわっと戻される。



ラリゴ

「馬鹿な…」



神威

「終わりだ!!風刃の太刀5連‼︎」



ぐあああ!



ラリゴは倒れる。



神威

「はぁ…はぁ…よっしゃ!」



「やっと終わったの?」

ニコッと笑う。



神威

「服がそんなはだけた格好の唯さんに言われたくありませんね」



「う、うるさい!見るな!」



海月鞭(ジェリーウィップ)をチラつかせる。



神威

「いや〜!それは勘弁して下さい!」



「はぁ。」



神威

「どうしました?」



「私があなたに助けられるなんて。と思ってね。」



神威

「仕方ないですよ…唯さん女性なんですから」



「何?落としにかかってんの?」にや



神威

「ち、違いますよ!」



「じゃあ家までおぶってくれるかしら?」



神威はじ〜っと唯のはだけた体を見つめる。



「変なことしたら殺す」

もう一度海月鞭(ジェリーウィップ)をチラつかせる。




神威

「わ、分かってますよ!彼女だっているんですから!」



「はいはい。早くしてくれる?疲れたから」



神威は唯をおぶって倉庫を出て行く。







「あんたさぁ〜。」



神威

「はい?」



「本当に試験受けるのね。」



神威

「はい。」



「私が言うのもあれだけど…かなり厳しいわよ?誰でも努力すればおいそれと受かるもんじゃないの。」



神威

「はい。」



「はぁ。仕方ないわね。私も一緒に着いてってあげる」



神威

「え?本当ですか?」



「あのクソ馬鹿チャラ男の顔ももう一回見たくなったしね。」



会ったらひっぱたく!!いや私の鞭で八つ裂きに…とかずっとブツブツ言っていた。



神威

「クス…そうですか。ありがとうございます。」



「何笑ってんよ!」



バシン!



神威

「いて!何するんですか!?」



にや〜?



「な、何するつもり?」



神威

「走ります…全力で!」



「は、はぁ?っあ!ちょっと!いや〜!」



神威は走り出す。



「や、やめなさい!っあ!は、早く止まって!」



神威

「何でですか〜?早く帰りたそうでしたよねー?」



「あ、当たるのよ。それに振動が…」



神威

「当たる?よく分かりませんねぇ。」



ビリビリ…。



ぎゃあああ!!



「次走ったら本気でやるわよ。」



神威

「す、すいませんでした。」




こうして神威の地獄生活1日目が終わった。




12月22日…界食まであと182日。





















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