第3話 胡桃沢の不注意
「今日も最高のおっぱいだったね!!」
「ああ!!さいっこうのおっぱいだったぜ!!」
ライブ兼サイン会が無事終わり、俺たちは駅へ向かい歩きながら感想を言い合う。
「ナッツ今日もグッズ全部買ってたね。うん十万くらいしたんじゃない?札束出してたし。」
「なに言ってんだよ。金なんて気にしちゃ何にも買えないぞ?」
「いやそれはそうなんだけどさ〜。めっちゃ金もってんなと思って。なんかバイトしてるの?」
「う、うーん、そんなとこかな。」
「へぇ〜、俺もバイトしようかな。もっとグッズ買いたいし。」
親からの小遣いだなんて言ったら、明らかに高校生が貰える額じゃないことを変に思われて詮索されるかもしれない。面倒ごとは避けたい。それに嘘はついていない。父の仕事の手伝いやらをいろいろやってその分の報酬としてお金を頂戴しているからな。
「てか、あの新曲歌ってくれると思わなかったからほんとめっちゃ嬉しかったな!ぺったんもほんとまじかわいかった・・!!」
「それだよな!!まじサプライズすぎて掛け声のおっぱいくそでかくなったもん。俺のぽよちゃんもくっそかわいくてもうしぬかと思った。」
それぞれの推しがよかった可愛かっただの、ライブパフォーマンスが最高だっただのをばんばん言い合っていると気づいたら駅に着いていた。
「今日も一緒に行ってくれてありがとうね!やっぱナッツとライブ行くとすごく盛り上がる!!」
「いやいやこちらこそありがとな。あ、これ母さんから。オレンジ味らしい。」
「うわ〜!ナッツママのマフィン!!毎回すごく美味しいんだよなぁ。ありがとうって伝えておいて!」
「伝えとくよ。」
「じゃあまたイベントとかで会おうね!」
「おう、楽しみにしてる。」
ゆのぺいと別れて俺はまたトイレに向かう。
あ〜ほんと最高だったな〜〜まだおっぱいに浸っててえなぁ〜〜
そんなことを思いながら、家から駅までで着ていた服に着替えて、グッズを普通のトートバッグやリュックに入れてトイレを出る。
よし帰るか〜
俺は電車に乗るとすぐイヤホンをしライブのセトリ順に曲を流し眼を閉じた。
半分くらい聴き終わったところで最寄駅に着いた。
ああ腹減ったな、コンビニにでも寄ってくか。
最寄駅から少し歩いたところにあるコンビニに寄り、肉まんを買って帰ろうとすると
「あれ、胡桃沢くん?」
ちょうどコンビニを出たところで、学校でくそまずいグミをくれた吉丘かなこに会った。吉丘本日二度目の登場。
「うお、吉丘。・・・家ここら辺なのか?」
「うん。すぐそこだよ。 ずいぶん大荷物だね。」
「あ、ああ。ちょっと買い物してたら買いすぎてしまって。ははは。」
「へぇそうなんだ。じゃあまたね〜。」
「じゃ、じゃあな。」
びっくりしたーーまさか同級生とライブの帰りに会うとは。
おっぱいグッズを持ってるからなのか、普通の格好でもなんか身構えてしまう。
さっさと帰ろう。
歩いたその時
ビンッッ
ん?二歩目が出せなぅわぁぁぁぁぁあああ!!
ドスッドサドサドサッ
「胡桃沢くん?!」
「痛って・・・」
くそ靴紐踏んじまったのか、グッズは・・・うおおおおおおおおおお!!!!
そこら中に散らばってるじゃねえかーーーー!!!!
トートバッグに入れてたグッズがほとんど出ている。
「大丈夫?すごい音してたけど。」
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい
吉丘が心配してこちらにやってくる。
やばい!!はやく!バッグに入れなければ!!!
今年最速の手の動きでバッグにグッズを詰めていく。
これとこれとこれと!よし!!全部いれ終わっ
「これもかな、ん?おっ
「うおおおおおおおおお!!」
「うわあ!」
吉丘が拾おうとしたものを素早い動きで取り上げた。
「おお!!これだな!!ありがとう!吉丘!!じゃあ俺は急いでるからこれで!!」
「う、うん。あ、これ」
俺は逃げるように走って帰る。
大丈夫、大丈夫。吉丘は『おっ』は読めたけどその先は見えてないはずだ。外は真っ暗だ。コンビニの明かりは少々あるが、離れている。そんなちょっとの明かりで見えるはずがない。
あぶなかったぜ。まさかこんなとこでヘマするとは。
念のため明日学校に行ったら吉丘には、昨日のはオッフェンバック(チェリスト)の楽譜とでも言っておこう。俺はピアノはもちろん、チェロも弾けるからな。
胡桃沢が去り、吉丘は一人になる。
吉丘は足元にあるものを拾う。
「こっちにもあるんだけどなぁ」
吉丘はそれを読み上げる。
「・・・はっぴ〜おっぱいがーるず3・・・・」
胡桃沢家
ないないない!!!!新作ゲーム『はっぴ〜♡おっぱいがーるず3【Z】みんなで合宿らいぶ』がないいいいいいいい!!!!まさか落としてきてしまったのか?!コンビニに?!うそだろ?!絶対吉丘見たじゃん!!絶対見たじゃん!!
もういい、見たかどうかは確かめないとわからない。それより新作ゲームしかもサイン入りを落として拾わず帰ってくるなんて俺は何てバカなんだ!!!くそ!!
とりあえずもう一回コンビニに行って落ちてないか探そう。
コンビニ
「そうですかないですか・・」
コンビニ周辺を探したがなかったので、コンビニ店員に落し物はないか聞いたがそれもダメだった。
ないじゃん!!なんで?!!誰か持ってっちゃったの?!!
まさか吉丘が?あれをわざわざ持って帰ってったの?
吉丘はもうコンビニにはいない。確かめようがない。明日学校で確認するしかないのか。
くそ、もうオッフェンバックの楽譜だよなんて言えないぞ。
どうする。もし吉丘が持っているとしたら、明日何かしらのアクションを起こすはずだ。そして多分その時俺は脅される。拾ってこれが証拠だといいつけてこの趣味を全校生徒にバラされたくなければと言い放たれるのだろう。
俺は脅しなんかに屈しないぞ、吉丘。
愛するおっぱいのためぽよちゃんのため、明日絶対に取り返してみせる・・!!
今日早速ゲームやりたかったのになぁ・・・・
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