第6話
依頼したのは近衛 菜々子。
―つまり俺の師匠だと衝撃の事実を聞かされた俺は直接NTKに向かうことにした。
でも、服掴んでるこの子どうしよう?
とりあえずあのテンションがすごいやつは情報を喋るなり逃げていったし、この子も落ち着いてはいるみたいだけどどうしようか悩む。
「ねぇ、君の名前は何ていうの?」
「葉瑠乃(はるの)って......言います。先程は......助けてくださり......ありがとうございました」
ぺこりとお礼をする葉瑠乃ちゃん。
物腰が低く、すごくいい子だと分かる。
......あと可愛い。
どこかの2人にもこういうのを学んでほしいというのは思うだけ無駄なんだろうけど。
「葉瑠乃ちゃんだね、俺の名前は城ヶ崎 奏多。よろしくね」
「奏多......さん、綺麗な名前ですね」
そう言って葉瑠乃ちゃんはにこりと微笑む。
「そうかなー!あはは」
なに、この子超いい子!
持って帰りたい!
超頭なでたい!
葉瑠乃ちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませればあいつらの頭も治るのかな、とは思うだけ無駄なんだろうな×2
「俺は行かなきゃいけないところがあるんだけど葉瑠乃ちゃんはこれからどうするの?」
どうするの?
と聞いたのは葉瑠乃ちゃんが追われていたからだ。
おそらく何らかの理由があると踏んだ俺は少しでも危険性がある所に葉瑠乃ちゃんを連れていって巻き込まれないようにしようと考えていた。
「......」
黙ってしまう葉瑠乃ちゃん。
なんだこの空気!?
これはいけない!
女の子は大事にする主義なんだ!(2人は除く)
「俺の家に少しだけいてくれないかな?俺の友達もいるから安全だとは思うし」
「......!分かりましたっ!ありがとう......ございます!」
腕をぶんぶん振り喜ぶ葉瑠乃ちゃん。
やだ、もう!
頭おかしくなっちゃう!
こういうのを誘拐って言う?
何のことかな?
―城ヶ崎家に向かう途中、携帯のバイブが鳴り画面を見るとりょうからメールが届いていた。
財布は交番に届いており中身も無事だったようだ。
めでたしめでたし。
「......と思ってたんだが、2人共どうした?」
「「この子誰 (ッスか)!?」」
「2人共!そんな大きな声出したら葉瑠乃ちゃんが可哀想じゃないか!」
「「下の名前呼び!!!???」」
未だに俺の服をつかみ離そうとしない葉瑠乃ちゃん。
なんて破壊力なんだッ!!!
「この子ちょっと訳ありみたいでさ、俺の家にしばらくいてもらうことにしたんだ」
「「私 (自分)達の愛の巣なのに!!!」」
さっきから息ぴったりすぎて思わず笑いそうになるが、頼んでいる身なので笑いを押し殺す。
「......俺からのお願いだ。2人共頼む」
「「ま、まぁお兄ちゃん (奏多さん)が言うなら......」」
やばい、ここまで来るともうほんとにやばい!
こいつら実は双子でしたとかそんなオチじゃないよな?
「......それと、俺は用事を済ませてくるから帰るのがちょっと遅くなるかもしれない。雫、琴音よ、葉瑠乃ちゃんのこと頼んだよ。あ、あと家から出た後盗聴したりあとを付けてきたりしたら一生口聞かn」
「「イエッサー」」
物分りが良くて非常に助かるが多分次揃ってセリフ言われたらもう無理だ。
「......じゃあ行ってきます」
「「無事に帰ってきて(下さいっす)ね」」
「ブフォ!!!」
だめだ、真面目なセリフだったのについに笑ってしまった。
息揃いすぎな!
急いで玄関のドアを開けて外に出てふと思う。
「あ、りょういたけどほぼ空気になってたな」
あの寂しそうな顔は多分忘れないだろう。
そして俺はNTKに向かうため、俺専用の車の運転手を携帯で呼び出す。
ものの5分もしないうちにリムジンが城ヶ崎家の前に到着し、それに乗り込む。
「第2支部長、どうぞ」
「ありがとう、セバスチャン」
「?誰ですか?」
「乗ってくれないのか。まぁ言ってみたかっただけだよ」
「私の呼び名は第2支部長のお好きなようにお呼びください」
そんな茶番を何度も繰り返し、NTKに到着する。
見た目は完全に悪いやつらの拠点のようだが、これでもしっかり治安を守ってるというから不思議だ。
広いロビーを通り、エレベーターで移動する。
師匠のいる階は全40階のある内の一番上、40階である。
しばらく待っていると到着のアナウンスが鳴る。
若干緊張しながら長い廊下を歩き、ドアの前に立ちノックする。
「この足音とノックは奏多ちゃんね、入っていいわよ」
「はい」
ドアの向こうから声がする。
俺の師匠でありNTK司令官でもある近衛 菜々子師匠の声が、そして俺は扉を開ける―
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