第4話

案の定いじられ倒した後、俺は急いで掃除、洗濯を終わらせた。

ランクアップの話と、謹慎の話を聞いたりょうと琴音は俺の家で

「お疲れ様会(笑)」

を開こうと提案してきた。

あれ?

これって馬鹿にされてるの?

りょうは後でシメるとして、俺の家でやるのには理由がある。

俺と雫の親は両方有名なファッションデザーで今は海外に移り住んでおり、両親がいない。

そのため。城ヶ崎家が一番都合がいいというわけだ。


「「おじゃましまーす!」」


「ただいま〜」


とここで、このパーティの主催者でもあるりょうと琴音、雫が到着した。


「はーい。椅子並べといたから適当に座っといて」


3人を促し、俺は料理をテーブルに並べていく。

両親がおらず、食事はいつも俺が作っているため、自分で言うのは何だがだいぶ本格的だ。

ラインナップは照り焼きチキン、手作りケーキ、ポテト、その他みんなが持ってきたお菓子類、炭酸と言った具合だ。

なんかクリスマスメニューっぽい。

1度確認するが俺って一応明日から謹慎だからね?


「おお〜、だいぶうまそうッスねぇ〜」


「そうか?」


照れる。


「ええ。とてもおいしそうです!楽しみですね」


「そ、そうかなぁ〜」


照れる。


「お兄ちゃんと私ってお似合いのカップルだよね」


「やっぱりそうなのかぁ〜......じゃないだろ!どさくさに紛れてなんてこと言ってんだ!」


照れない。


でも、やっぱり雫は可愛い。

両親がいなくなってからはずっと雫と二人暮らしであるため、いつしか俺は実の妹である雫に好意を抱くようになったのだ。


「勝手に俺の心の声を偽造しないで?」


「ごめんごめん。そろそろ始めようよ」


え?

それ雫が言っちゃうの?

なにしれっとした表情してるの?

なんで雫が主催者みたいになってるの?

なんでみんな食べだしたの?

どうやらパーティーは俺の知らない間に始まったらしい。


「「「おいし〜〜〜!!!」」」


「口にあってなによりだよ」


次々と料理が3人の手によって消えてゆく。

あれ?

これって俺が主役じゃないの......?

まぁ、素直に喜ばれると悪い気はしないけど。


「ところで奏多」


そこでふとりょうに名前を呼ばれた。

振り返ると、顔面蒼白で、目の光を失っているりょうがいた。


「......財布落としたっぽいです」


長い沈黙の後、りょうはしょんぼりと告げた。


「oh......」


物が物だけにだいぶ沈んでいる。

俺も小さい時に財布落として絶望的な1日を過ごしていたことがあるから良くわかる。

あの時、見つけてくれた雫が、

「発信......」

と言っていたが、何かの間違いだと信じたい。


「じゃあ今から探しに行くか」


「いいんですか?僕の問題ですから探すのは僕だけでもいいのですが」


「でも人数は多い方がいいだろ?」


今のセリフは女子に言ったら凄く好感度が高くなりそうだな。

覚えておこ......


「すいません、恩にきります。でも、そのセリフだいぶ痛いですね」


にこやかスマイルで心をえぐりとるりょう。

もう手伝うのやめようかな......。


「自分も手伝うッス!」


「お兄ちゃんが行くなら私も行く!」


「あなた達...奏多目当てでしょう?」


「「そうっス(だ)よ?」」


まさかの即答!?

ここまで来るとりょうがあまりにも哀れで仕方ない。

まぁさっきの報いだから仕方ないよね。

ざまぁ!


「なら、4人で手分けして探そう!そっちのほうが早いし!」


「「まぁ、奏多さん(お兄ちゃん)が言うんなら」」


しぶしぶといった感じで頷く2人。

どうやら、主に俺が大変なことにならなくて済みそうなのでホッとする。

こうして俺たちは手分けしてりょうの財布を探すことにした。




―近所の近場を探している途中、ふと路地裏に差しかかると、3人組の男達が少女を取り囲んでいるのが見えた。

3人はどうやら少女にいちゃもんをつけている様子だった。

少女の髪はショートカットで綺麗な銀色の髪の毛。

こんな綺麗な髪学校では見たことがないのでおそらく他校の生徒だろう。

でも、絡まれたらめんどくさいし、ここは退散させてもらお......美少女、だと......!?


「おい!お前達何してんだ!」


「あぁん!?誰だテメェ!」


あぁ、これは仕方ない。

ほんとに仕方ない。

美少女を助けるといいことしてくれるっておじいちゃんが言ってた!!


「ランダムの能力って言ったらわかるかな?」


話を続かせ助ける方法を探す。

どうにかして女子を助けなければと隙を窺う。

しかし、その言葉を聞いた途端3人組の男の1人が顔を真っ青にした。


「お前......まさか、ランダム......破壊神か!?」


破壊神?

全く聞いた事のない名だったが、それほどまでに怖いのだろう、男の足はガクガクと震えていた。

もしかしたら他の人と勘違いしてるのか?

それなら乗っかるのも一つの策だ。


「おい!お前こいつ知ってんのか?」


「知ってるも何も、こいつですよ!前に新聞に載ってた!」


「まさかお前が前に言ってた!?」


あれ?

俺って新聞に載ってたっけ?

新聞に載ってたら雫が騒ぎそうなんだけどな?

よく分からないが、次に発せられた男の言葉で全てがつながった。


「この前確か高層ビルの1階だけ見事に道路の真ん中にテレポートさせたあいつです!」


あっ、それ俺だ。

でも破壊なんてしてない。

仕方ないだろ、どんな能力が出るか俺もわかんないんだから。

なんて言っても世間は許さないだろう。

その後は、なぜかそこに居合わせた雫により、元に戻してもらった。

俺、助けられてばっかだな。

まぁ、いつもなんで居合わせてるのかって事は考えないようにしよう。

後、新聞は雫がどうせ残してあるだろうから......出版社覚えておけよ?


「だがつまり、ランダムなんだから自分の能力自体がわからないって事だろ?それなら気をつければ3人がかりでも勝てるはずだ!」


どうやらこの男、見た目の割にちゃんと考えられるようだ。

と、俺が戦闘の準備をするより早く、3人が襲いかかってきた。


「俺の能力は筋力上昇(パワーアップ)!ランクはC+だ!食らえ俺のパンチ!」


あ、教えてくれるんだ。

ご丁寧にありがとうございます。

繰り出されたパンチを避けるまでもなく素手で受け止める。


「っふぅ〜!一般人なら致命傷だな」


受け止めた手がヒリヒリする。

アザにならないといいけど。

雫にバレたら、

「お礼参り行くよ」

とか言いかねない。


「「「じゃあなんで素手で受け止められるんだよ!?」」」


タイミングよく3人同時に口を揃えてツっこんでくる。

人はこれを隙と呼ぶそうです。

その隙を突き、女の子を小脇に抱えて男達と距離をとる。


「なんで女1人抱えてそんな動きができる!?」


敵から10メートル程離れた俺は少女を助けることができて一安心する。

その時に俺を見る1人の男に見覚えがあったので記憶を辿ってみる。


「......なぁ、そこのフードかぶったやつ、もしかしてNTK(能力者対策機関)にいなかった?」


能力者対策機関とは、昔で言う警察の様なものだ。

昔の世界では警察が主な取り締まりをしていたのだが、少なからず起こる犯罪が能力者絡みの事件が多いので、代わりに設置された機関である。


「ああそうだ。よく知ってんな?俺はそこの元第8支部団員だ!」


この機関は支部が1~8まであり、数字が少なくなる程強さが増していくシステムになっている。

第1支部まで行くと、そこの支部長は戦争を1人で終わらせることが容易に出来ると言われている。


「第8支部って事は、遊庵(ゆうあん)の所かー。あいつ教えるの下手くそだからなー。大変だったんじゃないのか?」


「なんで支部長のこと知ってんだ?お前もどこかの支部にいたのか?」


「ああ、俺、支部長だから。ちなみに第2支部ね」


支部長とは言っても学校を優先させてもらうし、学校終わりや休日の時間が空いた日に事件を解決したり、団員を指導するくらいのもんだ。

この事はりょうや琴音にはもちろん、雫にも内緒にしている。

言ってしまうと、なんだか距離が遠くなりそうと思い、何があっても言わないと誓っている。

それに、雫が知ったら心配だ何だとか言って辞めさせられそうだしな。


「」いやはぁ!?第2支部って事は3人の悪魔の1人、素の力だけでSランクを超えるっていうあの!?俺一抜けた!」


まぁ、流石にSランクを超えるかと言われると分からないが、3人の悪魔ってひそひそ言われてたの悪口じゃなかったのかと分かり、安堵する。

鏡の前で笑う練習してたからね。

その時のシャッター音は何だったのだろう?

と、逃げる2人を見ながら残った帽子をかぶった男を凝視する。


「―おい、帽子のやつ、お前は他の2人とは違うだろ?これは俺の勝手な想像だが、2人のボスはお前なんじゃないのか?明らかに場数が違うだろ?」

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