第3話

琴音の宿題をなんとか終わらせ (ほとんど雫がやったが)テレポートで学校に着いた俺は雫と別れ、琴音と一緒に教室に到着した。

そこで待っていたのは中肉中背で眼鏡が似合う俺の親友、榊原 涼一(さかきばら りょういち)だった。

いかにも真面目系だがまぁ、モテるんだけど本人は心に決めた人がいるみたいだった。

涼一の能力は速度上昇(スピードアップ)。

ランクはC-と中間的だ。


「おはようございます。今日はやけに遅いですね奏多、何かあったんですか?」


「ああ、りょう、おはよう。まぁ今日も色々とな?」


りょうに質問され、俺は複雑そうな顔で返した。

雫の学校での人気度は凄まじく、琴音も何かとファンが多い。

朝のようなことを言うといつも仲良しなクラスメイトたちが殺気立つので言わないようにしている。


「ああ、なるほど。言わなくてもだいたい察しました」


「助かるよ。りょう」


りょうというのは俺が付けた涼一のニックネームだ。

小さいときから呼んでいたので、なかなか抜けきらない。

今日は朝からだいぶ疲れがたまっているので俺は机に頬をつけ、グッタリとうなだれた。

机の冷たさが心地いい。

机がキンキンに冷えてやがるよぉ!!!

はぁ、今日は実習もないしゆったりした1日が送れそ......


「疲れてるところ悪いのですが、今日は時間割変更で1時間目から4時間目まで実習になりましたよ?」


もう退学しようかな?

割と本気でそう思った。



実習場に着いた俺とクラスメイト達はその後到着した先生の話を聞いていた。


「ランクA〜Dの生徒は3人ペアでシュミレーション室に移動し敵のレベル、種族を設定、各自実習を開始しろ」


今説明しているのは、担任兼能力実習の先生である貴羅 宙(たから そら)先生だ。

美人だが、口が悪い為よく男に逃げられる。

本人に言ったら殺されるゾ☆

そして、この学校は能力者しかいない為、「シュミレーション室」と言うものが特別に設けられている。

敵のレベルを設定することで自分に合った敵と戦うことができる。

その時、敵の種族も設定でき、オークやスライム、キメラ、オーク (2回目)といった種族が選択できる。

そしてもう一つ、シュミレーションのため、去年までは攻撃が当たってもダメージを受けない設定になっていたが、リアリティに欠けるとのことで今年はダメージの有無を設定できるようにもしてある。

ちなみに俺の所属するクラスにSランクの能力者はいない。

割と高ランクの奴らが多いけど。

りょうや琴音とは離れたくないけどクラス変わらないかなーなんてことを思ってしまう。


「次にE〜Gのクズ共はそうだな......適当にニスファルの森にでも行っとけ」


「「「投げ捨てやがった!?」」」


「「「クズってなんだよ!!!」」」


あんまりにも扱いがひどいため、声をそろえ意見を口にするクラスメイト達。

そうだそうだ!

もっと言ってやれ!


「使えねえ能力者にクズって言って何が悪いんだよ?オメェらにこんなことできんのか?」


何だか化けの皮が剥がれてきた先生が俺らに見せたのは、炎を操る能力者の映像だった。


「「「......」」」


正論を正面から言われ、返す言葉もないのでおとなしく近くの森に行くことになった。

みんなの背中がとても悲しかった......



街と森の境目にはSランク術式の能力者が張った術式があり、人の行き来は自由になっているが、モンスターは行き来出来ないようになっている。

このSランクの能力者は高校生とも社会人とも言われている謎の人物との事だ。

なんでも国から派遣されているとのことらしい。

この術式は張った人物が解除するか、死ぬかのどちらかでないと消えない。

それほどまでにSランクの能力者は凄まじい力を持っているのだろう。

そして、ニスファルの森には雑魚のモンスターが多く生息しているため、下位の能力者にはもってこいの狩場となっている。

しかし、上位ランクと同等のモンスターも稀に出る。その時は......逃げる☆


「それにしても術式って便利ッスね。自分も術式の能力が良かったッス」


「同感だな」


「全くですね」


「だよなー」


ん?

ってあれ?

その時、ここにいないはずの声が聞こえ、振り返ると、知った顔の主がそこに立っていた。


「なんでりょうがここにいるんだ?りょうって確かCランクだろ?」


「ああ、その事ですか。僕は奏多と琴音といたほうが楽しいですからね。先生に言ってこの班に混ぜてもらう事にしたんですよ」


「「なるほど(ッス)ね」」


声を揃える俺と琴音。

この3人は何かとよくつるんでいるため、寂しくなったのだろう。

そして、E〜Gランクの生徒達は森の途中まで行った後、3人に別れ、それぞれバラバラに進んでいった。

大勢で行っても戦闘のバランスや指揮が取りにくいためだ。

そしてメンツはやはり、俺と琴音とりょうだった。


「おっ?あそこの茂みに何かいるみたいッスよ?」


「よし、2人とも気合い入れて行くぞ!」


「ちなみに奏多の今の能力はなんですか?」


「えーと、確かセンサーだったはずだけど......」


朝にこの能力を使い雫の裸体を見てしまった事を思い出し思わず赤面してしまう俺をりょうは怪しそうに見る。


「何故顔を赤らめるのかわかりませんが、ランクはどのくらいなんですか?」


「たぶん、Dくらいじゃないかな?」


能力者は大体の自分の能力値が分かる。

あくまで大体だが。

例えば、Cランクだと思ってたら、Bランクだったとか、勿論その逆もある。


「それなら、モンスターの位置、種族くらいは分かりますね?早速ですが調べてみてください」


「OK!行くぞ!」


指示を促され一歩前に出る。

そして能力を発揮した。

が、出た能力はセンサーではなかった。

目の前が赤く染まったかと思うと魔物たちの断末魔が辺り一面に響き渡った。


「奏多、それはセンサーじゃありません!発火能力(パイロキネシス)です!」


「まじ?」


「奏多さん......いつの間にこんな実力を!?」


朝も言ったが、俺の能力はランダム。

しかしそれは時間式である。

今までこの力を使ってきて、この能力は平均で10分〜20分で切り替わることが分かっている。

どうやらこの発火能力はBランクくらいあるようだ。


「さすがランダムですね。僕も驚きを隠せません」


「そ、そうか?でもBランクかぁ。ランダムって、能力のランクもランダムだけど、こんなに高ランクの能力まで出るのか」


ふむふむ、今までは普通の能力しか出なかったけどこんなに上位ランクの能力も出るのか。


「ところで2人とも......非常に言いにくいんスが......」


ここで申し訳なさそうに声をかける琴音。


「なんだ?」「どうしました?」


声を揃える俺とりょう。

そして琴音は首をかしげる俺たちにあることを告げた。


「この森どうするんスか?」


―森が......燃えている......


「「あっ!」」


「ヤバイ!」


叫ぶ俺たちの声も届かず燃え広がる森。

今から先生を呼びに行ってもおそらく手遅れだろう。


「すいません。僕のスピードアップを使っても間に合わないかもしれません」


残念そうに呟くりょうとともに俺も悔しそうに呟く。


「くそっ。......こんな時に雫でも居てくれれば!」


「お兄ちゃん、呼んだ?」


「っておおぃぃぃ!!!なんで雫がここに居るんだよ!」


茂みから現れ、肩についた木の葉をパッパッと払う雫。


「えっ?お兄ちゃんウォッチングだよ?」


グッ!


「イイッスよねかなたさんウォッチング」


グッ!


「グッ!じゃねー!なんで共感し合ってるんだよ!それに雫はいつから居た?」


雫にマシンガントークを浴びせるが本人はしれっとして聞く耳持たずと言った様子だ。


「おはよう。今日はやけに......」


「最初からじゃねーか!」


これからは後ろに気をつけよう。

いや、念には念を入れて全方位見渡そう。

全く......雫は謹慎、琴音は危うく退学なんて状況だったのにまだウォッチング(?)を続けるのかともう呆れを通り越して感心してしまう。

だが今はそれどころじゃない。


「雫......」


と言いかけたところで雫は親指をぐっと立てた。


「分かってるよ!先生を呼んだらいいんだよね?」


「ああ。お願いできるか?」


「任せて!お兄ちゃん!あっ。後、今日の朝の約束忘れないでね。じゃあ、行ってきます!」


ああ、琴音の宿題手伝った時か。

確か今日の夜、一緒に寝る約束だったっけ。

でも考えてみると最近話すこともスキンシップをとることも少なくなっていた気がする。

スキンシップを取りたいわけじゃないけどね。

うん。




―雫が呼んできた水を操るランクA+の先生のおかげで火は見事に消えました。

その後校長室に呼び出され、自宅謹慎1週間を食らったのち、燃えたモンスターの中に高ランクのモンスターがいて、さらに、Bランク並みの能力が出たこともあってか報告したところ、ランクがGランクからFランクになりました。

チャララチャッチャッチャッチャー!

レベルアップしたようだ。

でも教室行ったらあいつらに弄られるんだろうな......


「「うぇるかーむ!」」


......ほらね?

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