第9話

朝、カーテンの隙間からこぼれる光で目が覚めた。


「んーーーーー」


体を起こし伸びをする。

そうだ!リュウ?リュウは?

昨夜リュウが寝ていた場所にリュウの姿は無かった。


「リュウ…」


また、いなくなってしまったのか…


ガタン


お風呂場のドアが開く音がした。

顔を向けると、上半身裸のリュウが濡れた髪をタオルでゴシゴシ拭きながら立っていた。


「あ、おはよー。シャワー勝手に借りた」

「リュウ…」


考えるより先に体が動いていた。

俺はリュウに駆け寄り抱きしめた。


「え?なに?どうしたの?」


リュウの問いかけに答えることなく、俺はリュウを抱きしめ続けた。


「あのさ、寒いんだけど」

「あ、ごめん…」

「まったく…」


リュウはそう言うと軽くキスをして体を離した。


「ねぇ、マリオ。なんか服ない?俺の服、汚れてなんか臭い」

「あ、あぁ、ちょっと待って」


適当に服を見繕ってリュウに渡す。


「サンキュ」


ゴソゴソと俺の服を着るリュウを眺めながら、心の中はなんとも言えない幸せな気持ちに満ちていた。


「なに見てんの」

「いや、ちょっと大きかったか?w」


小柄なリュウに俺の服はちょっと大きかったようで、手はすっかり袖の中に隠れてるし、ズボンもかなり長いようだ。


「うるせー」


リュウは、ブツブツいいながら袖とズボンの裾をまくりあげた。


「ねぇ、マリオ」

「なに」

「腹減った」

「あー、トーストでいい?」

「なんでもいいよ」

「じゃあ、ちょっと待ってて」


天気もいいし、洗濯機も回しておこう。

リュウの洋服も洗っておこう。

洗濯機を回して、朝食作りに取り掛かった。

といっても、目玉焼きとトーストとコーヒーという簡単なものだけど。


「目玉焼きは半熟ね!!」

「わかったわかった」


テーブルにトーストと目玉焼き、それとコーヒーを置く。


「うまそぉー!いただきまぁーす!」


勢いよく食べ始めるリュウ。

まるで子供のようだ。


「なに見てんの」

「いや、うまそうに食うなーと思ってね」

「だってうめぇもん」

「なぁ、リュウってさ」

「なに?」

「なんの仕事してんの?」


食べる手が止まる。


「仕事とか別になんでもよくね?」

「あぁ…まぁそうだけど…」


言いたくないのか…


そのとき、洗濯機がとまる音がした。

洗濯物を干して、食べ終わった食器を片付けてしばらく他愛もない会話をしていた。

なんともいえない穏やかな時間。

この時間がずっと続けばいいのにと思った。

気づくと時計は15時を回っていた。


「ねぇ、ちょっと出かけない?」


リュウが思いついたように言った。


「あぁ、いいけど」

「よし、出かけよう!」

「そろそろリュウの服も乾いてるだろうしね」


服を着替えて、出かけることにした。


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