第2話 探索したい
ポス
「いで…」
「お嬢様っ!」
とりあえず今の状況を整理するために何か紙とペンが欲しくて机らしきものに近づくためにベッドから降りて歩き出そうとした。
の、だが。
気が付いたら目の前には高級そうなふかふかの絨毯が広がっていた。何が起きたんだろうか。
「お怪我はありませんか?」
すぐに駆け寄ったメイドらしき人…いや、メイドか。
メイドにあちこち確認された後抱き上げられてベッドの上に戻ったときにようやく何が起こったのかを把握できた。
ベットから降りて歩き出そうとして頭から床に落ちたのだ。
それはもう緩やかに、一瞬のことだった。
体が、特に下半身がうまく動かなくてそれでそのまま。
「病み上がなんですから、すぐに動きまわろうとしちゃダメですよ。しばらくは動き回らずに、ベッドの上で少しずつ無理の無い程度のリハビリから始めて少しずつ筋力を回復させることが大切だってお医者様も言っていました。」
そう言ってメイドは私を寝かせて布団を被せた。
なんと。
よくわからない状況になっているのに自分で歩き回って情報を整理することができないなんて。
ましてや紙と筆記用具さえ自分で手に入れることができないなんて、そんなことあって良いのか?
どうしよう、どうしよう。
いったいどうなっているんだ。私はこんな所には住んでいかったはずだ、金色の髪も可愛い声も持ち合わせていなかったはずだ。
なのになぜだか落ち着く、どうして。
なんで、わからない。
目覚める前の記憶はなにも無い。
でも熱烈に、違和感が主張してくるのだ。違うって。
私がベッドから落ちてから数時間がたった。と、思う。
どうやらこの部屋には時計がないみたいなので体内時計を頼りにしている。
窓の外の光はオレンジ色を纏い始めている。
私が寝っ転がっている間部屋はとても静かだった。
ベッドから少し離れたところの椅子にはメイドがずっと座っていて、一寸前からうたた寝をしているようだった。
目覚めてから今まで、記憶があるのはその間だけで、私がその間に会った人間はメイドと白衣のお医者様だけ。場所もずっと変わらずベッドの上。
金持ちのお嬢様だと予想した。一ヶ月寝たきりだったのも聞いた。それなのに、なんで。
なんで家族は誰も会いに来ないのだろうか。
一ヶ月ぶりに目覚めたらしいというのに。
こちょうのゆめ 沙魚川 @h1rera
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