第三話 消しゴム
僕は消しゴム。白い体で、消しやすくて有名。僕のお仕事は、知っての通り文字を消すこと。「学生」っていう期間の人間に特に重宝されているよ。
そんな僕は最近悩んでいることがある。使われた分だけ小さくなる僕は、今やすっかりすり減って、生まれたときの四分の一になった。文字通り、身を粉にして働いているわけだけど、僕の小さい体は持ちにくいみたいで、ゆきちゃんはもう交代要員を机に引き出しに用意している。なんだか皮肉な話だよね。
なんてことを気にし始めると、思考はどんどん深みにはまって、ここ一週間の考え事は、僕の存在意義についてだ。「消しゴム」である僕は基本単体では使われない。なぜなら、鉛筆おじさんやシャーペンさんがいてこその僕だから。彼らの存在無くして使われることはないんだよ。つまり、僕のアイデンティティは他の文房具に寄りかかっている。人間みたいに他者を鏡にして自分を確立する必要もない、役割が明瞭な存在に生まれついたのに、僕ら「消しゴム」のアイデンティティは少しぐらぐら不安定だ。ついこの間まで「その気があれば大抵のことはできる人間が羨ましい」なんて考えていたけれど、もうそんな夢は見られないと思う。たぶん、考えすぎるきらいがある僕じゃ、人間の複雑さにきっと『嘔吐』してしまうだろうからね。
戦う文房具 うのはな @okaraoishii
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