5
かほりさんは、僕や三津川と同じように周りの奴らの行動に苛立っているようだ。なんだか仲間が増えたみたいで嬉しかった。
3人でバナナシェイクを飲みながら、日々の愚痴をこぼしあっていく。
「道端広がって歩くとかほんと迷惑」
「そー。ど真ん中突っ切っていいってことなの?」
『制服着崩すとかダサくて見てられない』
「寒いとか言うならスカート巻くなっての、生足晒すなっての」
マスターはそれを微笑みながら眺めている。マスターは『聞いてよマスター』とでも言わない限り、ずっと微笑みながら皿やカップを磨いている。変に干渉しないでそっとしておいてくれるのが、僕達にはありがたかった。
ひと通り愚痴をこぼし終わると、バナナシェイクやマスターがおまけで出してくれた特製クッキーでお腹も満たされ、僕達は帰ることにした。
またここで会おうね、と約束をして。
家に帰ると、おかえりー、気のぬけた母さんの声が聞こえる。廊下にだらーんと寝っ転がっている猫のぽんを跨いで、自分の部屋に入った。
久しぶりに仲間が増えて嬉しかった。仲間が増えて嬉しかったが、それがさらに日々の苛立ちを大きくしてしまうような気がした。気がした、ではない。絶対にそうだ。幸せが増えればそれだけ嫌なことも増えるのだ。幸せだけなんてあるわけが無い。そもそも __
『爽良ー、ごはんー』
「…っ……はいよー」
…そもそも、幸せって何なんだろうか。何をもって幸せなんだろうか。
考え事がヒートアップしてきた所で母さんに呼ばれ、リビングに向かいながら、また考え事を続けた。
潔癖 ふくさく @fukufukuowl
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