2017/11/16

第1話

今日は一段と寒かった。でもこの冬の湿度が軽くなった空気と星が明るく見える感じ、嫌いじゃない。

バイトの帰り、いつもは車で駅まで帰るんだけど、今日はバスで帰ることになった。寒くてやだったけど、一瞬、焦点の外で嘘みたいに明るく堕ちた流れ星を見れた。人生初流れ星な気がするけど流れ星ってあんなに燃えてるもんなんですかね。

そこからは特になにもなくて電車を降りて駅から家まで帰るんだけどさ。帰り道でなんか雰囲気素敵っぽい気がしなくもない女の子と方向一緒だったわけ、歩くスピード一緒なんだけど並走するのも気不味いからちょっとスピード落としたりしちゃって。でもちらっと見えた横顔が小松菜奈の雰囲気で普通にきれいだったんですよ。もう小松菜奈って呼ぶけどさ。そんな感じでちょい後ろを歩いてたんだけど、あ、ストーカーとかじゃなくてね。方向一緒だから仕方なくね。

さっき見た流れ星のこと思い出して空見上げたんだけどそしたら星１つ見えなかったわけ、こっちの空は雲がいるのかなーなんて思ってたらさ、なんかふわついてるのよ。ふわふわしてるの。上空で。白いちっちゃいのが。雪なわけ。

思わず 「おぉ、」とか言っちゃったりして。そして視線を落としたらイヤフォンしてた小松菜奈がイヤフォンしてないの、で、こっち見てるの。たぶん小松菜奈も雪を見てイヤフォンとった時におれの声聞こえたんだと思うんだけどね。目合っちゃって。どうすればいいかわかんなくて。笑えばいいと思うよって声が聞こえて来て。会釈的なあれでニコってやろうかなって思ったら先に小松菜奈がニコってしてるの。もうね、ドラマ。ドラマよもう。短編小説かっつって、いやー参ったね。そっからは特に会話もなく隣を歩くわけでもなくさっきと同じ距離感は変わらないんだけどさ。小松菜奈はそのまままっすぐ、こっちは信号を右に曲がってから反対の歩道をまた同じ方向に向かって歩くんだけどさ。反対の信号渡り終えてちらって小松菜奈を見たら小松菜奈もこっち見てたわけ。目をそらしたりもしないわけ。でも会釈とかはしないわけ。横断歩道渡った分と車道の分さっきよりは距離があったけどさらに距離が縮まった気がするなんてことはなかったけどたった6分間の帰り道のたった4分間で今日の24時間をいい日だったと思っちゃうよね。