未来を見たかった。

ぼくが僕になってから

君を君とは見れなくなった。

無邪気に笑う君の顔を、思い出すことができません。

君のことを思うたび

あの日の君の脆さを思い出して

それだけでなにも考えられなくなるのです。


君が僕を好いてくれていたのは知っていた。

僕が君を好いているのもわかっていた。

だけどもう、僕はぼくじゃないから

こんなにも汚れた手で君を触る事は

とてもできない。



少し微笑んで、少し優しくすれば

肩を押して少女を倒すことが容易いと知った。

大人になるのは簡単だと、この手を汚すのは簡単だと、君が教えてくれたんだ。


僕はあの頃よりもっとずっと嘘が上手になったと思う。

それでも君には見透かされそうで

もう君に会う事はできないや。


本当は、君とふたりきりで生きたかった。

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君と違う世界 青葉芳 @aobys97

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