希望を無くし落ち込んだ少年チアキと不思議な少年マヌーの不思議な交流の物語です。
とても素敵な作品で、そう思わされる理由の一つは比喩表現の美しさにあると思います。文章のところどころに散りばめられた比喩はとても自然で美しく気負った表現が全くなくて、比喩の苦手な身としては「どうしてこんなに自然にスルリと出ているのだろう」と思ったのですが、それは多分作者様が日頃から美しい物語に触れたりその出会いを大切にされているからではないかなと想像しました。
光と闇、星時計なるものの存在、2人で見に行った星のかけら、そして魔法。世界を教えてくれたマヌーはチアキにとって特別なのでしょう。
傷つき打ちひしがれた心が徐々に癒されていく再生の物語、夢がありながらも影がありストーリーを追っているうちに思索にふける。不思議な魅力にあふれた作品だと思います。
どん底を感じた時、それでも立ち直ろうとする人の本能が、自分でも気づかぬうちに よすが となるものを求めたり、あるいは何か〝楔〟に繋ぎ止められていたりする。そんなイメージが見えるようなストーリーと筆致でした。
そう感じたのは、それが、はっきりと書かれていないからです。詩のように美しい謎めいた表現が随所に散りばめられているのですが、だからこそ、きっと感情移入できる読み手それぞれの形となって、胸に響いてくるものなのだと思います。不思議な文章で綴られていながら、実はとても計算されていて、深い。
きっと何か抱えているものがあるのだなと、読者にほのめかすその主人公の心の声・・・。そんな彼を〝諦めさせない〟もの、その存在とは・・・。
ところで、この物語と最初に出会った時、数話を読んですぐに彷彿した名作がありました。タグに『夜と霧』のオマージュとあるので、本来は、私が思う以上にやはり人間を描いた奥深い作品なのでしょう。
そのうえで、あえて私が感じたのは、宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』です。私はこのお話を、小説ではなくアニメーション映画で知りました。なんだか不思議な世界観、でも何となく深い・・・そういったところが、まさに、『銀河鉄道の夜』を観た時と同じ感覚でした。じっくり書き込まれた情景描写には〝美しい〟と思うと共に切なささえ覚えるほど。
この物語に込められている真意を肌で読み解きたい。そう思わされる作品です。
※ 改稿されているので再度読み直したレビューになります。
童話のような書き出しと、
優しい少年の語らいに、
僕とマヌーの物語に誘われます。
沈んだ少年の心模様。
月の美しい描写に、彼の辛さが
滲むようです。
チアキの元に、突然現れた、マヌー。
不思議な存在と、琥珀色の瞳が
強く、見つめて来ます。
もし、人生の道に迷ってしまった時、
マヌーの言葉を聞けたら、
踏みとどまれるかもしれません。
果たして、マヌーとは。
優しく描かれながら、
物語が描き出すものは、
マヌーの存在は。
まるで、人生や宇宙、世界そのものと、
向き合うようで、
大人向けの深い物語だと思います。
静かな語らいに、出会いに。
心癒される時間が流れます。
意味なんてない。世界はただそこにある。
大きく受け止めることが出来たら。
少し自分を好きになり、
生きることが出来ます。
マヌーとルークとの出会い、星時計。
神秘的で心惹かれます。
想いの力。
ベストを尽くす。
かけられる言葉に、元気をもらえる気がします。