かつて海外SFをよく読んでいた時があり、その懐かしさに抱かれると共に。日常と大胆なSF設定が、何の異和も無く一つの作品世界に溶け合う。
子育ての終わったセレブな奥様が、片手間にアカシックレコードに浸ります。レコードに触るまでには、幾つもの通過儀礼があり、最後にアロマオイルでリラックス。 たまに大喜利のお話がありますが、こんなに前振りが長いのは初めてです。
これ、オチも雰囲気も最高なんですけどね。ショートショートをどうレビューしたものやら……肩肘張って読む話では、決してありません。通勤中、休憩時間、そしてそう、夕食を作り出す前のひとときとか。そんなスキマ時間にサラッと読めて、それでこそ映えるお話です。ゆるく暖色に染まる部屋に、アカシックな寒色の光が差し込む感じ。アカシックなってなんでしょうね。今作った形容動詞です。最後まで読んで「ふふっ」と微笑んだら、作者さんの勝ち。ええ、負けましたとも。
アカシックレコード……。遥か昔に辿る旅。とても情景が美しく描写されています。切り抜かれた日常に、素朴で大切な疑問を投げかけています。オススメです。