海とけむり

作者 春川もここ

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★★ Very Good!!

村上春樹的なドロドロした恋愛観、男性的な「名前を付けて保存」や「代替不可能な思い出の美しさ」を、女性の側にも当てはめて描いてみたストーリーはこれまでにあまり見たことが無かったのですが、過去の相手に囚われてしまう拗らせた恋愛物語が好きな方(私もそう)にウケそうな作品だと、読んでいて思いました。
読み進めれば読み進める程に、なにをどうすれば、ここまで拗らせた作品を生み出せるのかと疑問に思ってしまうのでしたが、それがまた魅力なのだと思います。何はともあれ素晴らしい作品でした。

★★★ Excellent!!!

「女の恋は上書き保存」というけれど…そんなシンプルなもんじゃないんだ恋愛は!と心を抉ってくる物語です。馬鹿でダメ人間で、好意を向けられると吐き気がする女性相手なのに直球勝負以外の愛し方を知らない…ような、愚直で甘い草太のことを彼女は彼女自身の人生のためにここで忘れる決心をしたのだろうか、それとも忘れない決心をしたのだろうか。短いけれど内容が濃すぎて死にそうになりました。
「神格化された恋愛記憶からの脱却」というモチーフは映画「秒速5センチメートル」を彷彿とさせるものですね。大人の女性の恋愛をここまで美しく生々しく表せるとは!

三回付き合って別れた四回目の草太とその後の彼にも興味が湧きますが、それは主人公の預かり知るところではないのでしょう。逆に言うと、草太側の駄目男の自覚がある男性諸氏には破壊力MAX効果はばつぐんです。そちら側に立つと見方によっては死にたくなるかもしれないので閲覧注意…!(誉め言葉)