Chapter33 俺と神楽の格差


カルミナは、門周辺に集まっていた騎士達へ、各々持ち場や詰所に戻るように命じた。

ロアは最後までカルミナの顔を見ながら、何かを言いたげに首を傾げていたが、カルミナがキッと睨むと慌てて城内へと戻って行った。


俺とカルミナも王室へと戻る。


「んーっ、やっぱ納得いかねぇ! 普通は正義側である俺がチート設定だろうがよ。なんで悪役がチートなの?

おかしい! 神様ずるいよー!」


「ち、ちょっと落ちついてK? 私には何を言ってるのか、よくわからないんだけどっ。」


しまった。心の声が思わず出てしまっていたか。


「わ、悪い…何でもない、気にしないでくれ…

しかし、ふと思ったんだけど、マスティマって悪魔が、神楽は魔王サタンを倒したみたいな事言ってたよなー?」


「…うん。言ってたね。」


「それってさぁ、ひっじょぉ〜にマズくないか?

あいつの能力は略奪だろ? まず間違いなく、魔王からも魔力を奪ってると思うんだよ。

て事は、実質魔王以上の存在な訳だ。おまけに剣技やら魔法なんかも誰かから奪ってるかも知れない…」


ま、まさか、真の主人公は神楽説 浮上!


「それに俺達、普通の人間が魔王クラスの魔力を持った奴に、攻撃手段なんかあるのか…?

それに、略奪の条件が分からない。迂闊に近づけば力を奪われてしまうか…うー、わからん!」


俺は、もしかしてカルミナのクラウンネームも略奪されてしまうのではと考えたが、口にしなかった。


「うん。私にもどうしたらいいのかわからないよ…

ロアみたいに攻撃型のクラウンネームなら別なんだけど、普通の人間に悪魔が倒せるとは私は思えないの。

ましてや魔王なんて…

だけどねっ、天使族の白魔法なら悪魔に効果的だってのは知ってるよ。そこに頼るしかないのかなぁ…」


白魔法、闇を照らす聖なる魔法。

しかし、白魔法があるなら黒魔法もあるだろう。

黒魔法、光を呑み込む闇の魔法。


「俺達、人間だけで考えても打開策は浮かばないってかぁ…天使様達が来てから考えるとすっかぁ〜」


「…ふぁぁ〜、そうだねぇ〜私、今日は疲れたからもう寝るよぉ〜」


「おう、おやすみカルミナ。 俺はちょっと夜風に当たってくるよ。」


「うんっ。わかった。おやすみKっ」



今日は色々な事があり過ぎた。

天使と出会い、悪魔とも出会った。

そしてラスボスが俺と同じ日本から来た事を知った。

少し浸りたい気分だった。


城から出て意味も無く敷地内を歩く俺。

すると、少し離れた所でピカッと光り、魔方陣が見えた。

俺は、また敵襲かと急いで駆け付けた、

だが、そこにいたのは


「…なんだよ、お前か。こんな所で何やってんだよ。」


「おやおや、その苦虫のような顔は、圭ぽんではないですかぁ〜」


「それを言うなら、苦虫を噛んだような顔をした! だろがっ! 人を虫みたいに言うな」


ミサの後ろにもう1人魔法騎士が立っていた。

ミサよりも若く、とても人見知りなのかミサの後ろに隠れるように立っている。


「ところで、後ろの子は誰なんだ?」


「あ、この子ですかぁ〜? 私の後輩のアイリちゃんですよ。この子はまだまだ修業中の身なので、大魔法使いであるわたしが教育係に選ばれたのです。テヘッ☆」


は? お前は教育される係だろうが。


「初めまして、アイリちゃん。俺は小田 圭。よろしく」


「………。」 スッ


目を逸らされた…完璧無視された…

教育係よ、まずは挨拶から教育したほうがいいぞ。


「あ、あー、いや、えっと…こんな時間にミサは一体何をやってたんだ? 魔法の練習か?」


「ふっふっふ、聞いて驚くがいいです。この大魔法使いミサ様は、とうとう魔法の詠唱破棄をマスターしたのですよぉ〜。」


詠唱破棄とは、呪文を唱えるタイムラグを無くし、

すぐに発動できる。上位の魔法騎士しか詠唱破棄はできないとされている。 らしい…


ミサが言うと胡散臭さがハンパない。

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俺の不死物語に終幕をもたらすのは誰か 樋口 之 @higuchiyuki

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