蝶サイコー! ②アレもコレも擬態!

 ※文末にまとめを掲載しています。

  読みにくい文章に耐えられない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


「チョウ」に焦点を当てた今回のシリーズ。

 前回はアゲハチョウことナミアゲハや、チョウとガの違いに付いて解説しました。


 チョウと言えば、擬態ぎたいを行う昆虫としても有名です。


 タテハチョウのコノハチョウやテングチョウは、枯葉に擬態ぎたいしています。またアゲハチョウの幼虫は、鳥のフンになりすましていると考えられています。


 アゲハチョウの幼虫と聞くと、多くの方は緑色のイモムシを想像するのではないでしょうか。しかし、あれはサナギになる直前の姿で、孵化ふかしたばかりの頃はケムシのような形をしています。鳥のフンそっくりになるのは、一回から二回ほど脱皮した後のことです。


 勿論もちろん擬態ぎたいする昆虫は、チョウだけではありません。


 串のように細いナナフシは、小枝に化けています。

 東南アジアに棲息するハナカマキリは、ランに擬態ぎたいすることで有名です。


 あまり知られていませんが、生まれたばかりの彼等は全く花に似ていません。

 最初の脱皮を終えるまで、身体の色は赤と黒です。

 極めて毒々しい姿は、カメムシの幼虫によく似ています。


 多くの方が知っている通り、カメムシは悪臭を放つ昆虫です。

 くさい臭いは、捕食者から身を守るのに役立っています。


 ハナカマキリはくさいカメムシに化けることで、外敵を遠ざけていると考えられています。

 つまり、幼い内は防御に、成長した後は攻撃に擬態ぎたいを使っているわけです。


 そもそも生き物が擬態ぎたいする目的は、二つに分けられます。


 一つ目が、獲物を捕らえるための擬態ぎたいです。


 先ほど紹介したハナカマキリは、花に化けることでハチやチョウを捕まえます。またハワイに棲むシャクトリムシは、枝に擬態ぎたいし、ハエやクモを襲うことが話題になりました。


 変わったところでは、以前紹介したフォトゥリスるいのホタルがげられます。


 彼等のメスが真似まねるのは、他のホタルの発光パターンです。まんまとおびき寄せられた他のホタルたちは、哀れにも捕食されてしまいます。詳細は、『明日自慢出来る(かも知れない)話Z』(『彼等はなぜ光るのか?』)をご覧下さい。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883436079/episodes/1177354054883451592

 ※アドレスをクリックすると、該当する話に飛びます。


 一つ目が攻撃なら、二つ目は当然、身を守るための擬態ぎたいです。


 アゲハチョウの幼虫やナナフシは、擬態ぎたいによって捕食者の目をあざむいています。

 長い頭が特徴的なショウリョウバッタは、細い草にそっくりです。


 日本各地に棲むカワラバッタは、川辺の石に擬態ぎたいしています。

 彼等の場合、姿形はバッタそのものです。しかし巧妙に色合いや模様を似せることで、川原の景色に溶け込んでいます。


 モノマネされるのは、草や木だけとは限りません。

 ハナカマキリの幼虫のように、昆虫が別の昆虫を真似まねるパターンも存在します。


 多くの場合、モノマネされるのは毒のある昆虫です。


 毒のある食べ物を避けるのは、人間も動物も変わりません。

 毒のある生き物に姿を似せれば、捕食者に狙われるのを防ぐことが出来ます。


 事実、体内に毒を蓄えたカバマダラは、多くのチョウに真似まねされています。ツマグロヒョウモンやメスアカムラサキと言ったチョウのメスは、彼等に擬態ぎたいすることで捕食者を遠ざけています。


 カバマダラはオオムラサキと同じタテハチョウのチョウで、アフリカやヨーロッパ、アジアなどに棲息しています。日本にも棲んでいますが、奄美あまみ大島おおしまより南でしか見ることが出来ません。反面、彼等に擬態ぎたいするツマグロヒョウモンは、本州にも棲息しています。


 カバマダラのいない本州では、彼等が毒を持つことは知られていないはずです。

 ツマグロヒョウモンがカバマダラの真似まねをしても、意味はないように思えます。実際、フグのいない地域でフグを真似まねても、食べるのに躊躇する人間はいないでしょう。


 しかし彼等の行動は、あながち無駄な努力ではないようです。


 昆虫の天敵である鳥には、長距離を旅するものがいます。

 カバマダラがいる地域から来た鳥なら、彼等が毒を持つことを知っているはずです。仮にツマグロヒョウモンと遭遇しても、食べるのを躊躇してしまうことでしょう。


 この話はあくまでも仮説で、正しいと証明されたわけではありません。第一印象通り、全く役に立っていないと言う説も存在します。ただ、日本人が外国に行っても、フグに似た魚は絶対に食べないでしょう。


 長くなったので、今回はここまで。

 次回は更に、擬態ぎたいの不思議を追求します。


 ◇今回のまとめ◇

 ☆アゲハチョウの幼虫は、鳥のフンに擬態ぎたいしている。


 ☆生まれたばかりのハナカマキリは、全然花に似ていない。その代わり、悪臭を放つカメムシに擬態ぎたいしている。


 ☆擬態ぎたいには狩りのための擬態ぎたいと、身を守るための擬態ぎたいがある。

 

 ☆チョウには、毒のあるチョウに擬態ぎたいしているものがいる。


 参考資料

 忍者生物摩訶ふしぎ図鑑

 北村雄一著 (株)保育社刊


 海野和男 昆虫擬態の観察日記

 海野和男著 (株)技術評論社刊


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊


 新装版 蝶

 猪又敏男 松本克臣著 (株)山と渓谷社刊


 世界チョウ図鑑 500種

 華麗なる変身を遂げるチョウとガの魅力

 ケン・プレストン・マフハム著 大谷剛監修・訳

 (株)ネコ・パブリッシング刊


 トンデモない生き物たち

 白石拓著 (株)宝島社刊

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