彼等はなぜ光るのか? ③幼虫もサナギもピカピカなホタルたち
光る生物の謎を追究している今回のシリーズ。
前回はホタルに焦点を当て、意外な真実を暴き出しました。
第3回目はまず、ホタルの一生について解説したいと思います。
多くの方がご
卵から孵化した幼虫は、サナギを
種によって差違はありますが、幼虫は黒いイモムシと言った姿をしています。
ゲンジボタルの場合、孵化したばかりの幼虫は1.5㍉ほどです。
普段は水中の小石に隠れており、夜になるとエサを探しに出掛けます。
幼虫の食べ物は、種によって様々です。
基本的には肉食で、陸上で過ごす種はミミズやカタツムリをエサにしています。また水中で暮らすゲンジボタルが、カワニナをエサにしているのは有名な話です。
カワニナは淡水に棲む巻き貝で、見た目はタニシに似ています。
殻の長さは30㍉ほどで、藻や落ち葉、死んだ魚などをエサにしています。
ゲンジボタルの幼虫はサナギになるまでに、およそ25匹のカワニナを捕食します。
食事の際には貝の中に頭を突っ込み、消化液で身を溶かしてしまいます。彼等はなかなかスローペースで、一匹のカワニナを1日から2日掛けて平らげます。
5、6回脱皮した幼虫は、春を迎えると共に陸へ上がります。
適当な場所に潜り込んだ彼等は、唾液で周囲の土を固めます。
そうして丸い部屋を作り上げると、サナギに姿を変えます。
成虫になるまでには、50日ほどの時間が必要です。
羽化したからと言って、すぐに顔を出すことはありません。
彼等は成虫になった後も、しばらくの間は土の中で過ごします。
長い時間を掛け、大人になるホタルですが、成虫の寿命は一週間ほどです。
短い命を惜しむように、彼等は夜ごと水辺を飛び交います。
美しい光は、幼虫やサナギにはない魅力です。
――と言いたいところですが、光るのは成虫だけではありません。
驚くべきことに、ゲンジボタルはサナギの時も光ります。
と言うか、幼虫も光ります。
あまつさえ、卵も光ります。
早い話、ゲンジボタルはその生涯に渡り、光を放ち続けます。
しかも、こういった特徴を持つのは、彼等だけではありません。
成虫が発光するホタルは、多くの場合、幼虫もサナギも卵も光ります。
とは言え、光の色やパターンは種によって様々です。
ゲンジボタルの光は黄緑色ですが、ヘイケボタルは黄色く光ります。
またゲンジボタルはゆっくり明滅しますが、ヒメボタルの光は一瞬で消えてしまいます。光り方さえ知っていれば、種類を見分けるのも難しいことではありません。
更にゲンジボタルは、地域によって光る間隔が異なります。
西日本に棲むゲンジボタルは、2秒に一回の間隔で光ります。
しかし東日本に棲むゲンジボタルは、4秒に一回しか光りません。関西生まれがせっかちなのは、人間もホタルも変わらないようです(偏見)。
ゲンジボタルのように一生光り続けるホタルがいる一方で、光らない種も少なくありません。
世間の常識とは正反対に、幼虫時代だけ光るホタルも存在します。オスとメスで光の色が違う種や、オスしか光らないホタルも発見されています。
一般に知られている通り、成虫が光るのは求愛のためです。
しかし幼虫や卵が光る理由は、はっきりとは判っていません。一説には前回紹介したウミホタルのように、光で外敵を
そして成虫の場合も、求愛のためだけに光っているとは限りません。
甘い誘いであるはずの光が、罠である場合も存在します。
多くのホタルは、成虫になると口が退化してしまいます。ゲンジボタルやヘイケボタルの成虫は、水滴を
しかし中には、成虫になった後もエサを食べるホタルが存在します。
特にフォトゥリス
フォトゥリス
先に書いたように、ホタルには種類ごとに発光パターンがあります。オスは光り方や点滅の間隔を見て、相手が同じ種類のメスかどうか判断しています。
この性質を
彼女たちは別のホタルを
自然界には何かに
フォトゥリス
長くなったので、今回はここまで。
最終回は光を使い、
参考資料:発光生物のふしぎ
光るしくみの解明から生命科学最前線まで
近江谷克裕著 (株)ソフトバンククリエイティブ刊
トンデモない生き物たち
白石拓著 (株)宝島社刊
ホタル学 里山が育むいのち
古河義仁著 (株)丸善出版刊
光る生き物 ―ここまで進んだバイオイメージング技術―
池田圭一 武位教子著 (株)技術評論社刊
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