第2話二
Rとの出会いは間接的であった。彼と私の間にはいつでも口実が必要だったが、最初の出会いからそうだったのかもしれない。絵という口実が必要だったのだ。
私が彼の所属していた高校の美術部の展示会で彼の作品に謁見した。その絵はドレスを着た少女の周りに花が描かれた、白い絵であった。そのほかにも三枚ほど展示をしてあったが、いずれの作品のなかにも彼の絵に対する姿勢やこだわりが垣間見えた。精密かつ、誠実であった。まるでこの絵一枚一枚に命、もしくは魂を削っているような印象を受けた。それも、雷に打たれたような衝撃的なものではなく、正面から、両の目で見ているにもかかわらず、背後からなにかが迫ってくるぞわぞわとした寒気、もしくは殺気のような畏怖をその静かな絵から感じとったのだ。
その作品によって彼の名を知った。幸いにも当時の私は中学生であったが、学校を避けており、両親も私のそのような態度を了解していたため、会期中に毎日その展示会に足を運び、思う存分、彼の絵に謁見することが可能であった。そして、毎日会場に行けばいつか作者であるRに会えるはずだと思っていた。そう信じていた。だが、その展示会の最中に彼に出会うことはなかった。ただ、私にできたのは時間の許す限り会場に居続けて、暇を持て余して不良ぶりながら彼を待つことと、入場するたびに渡されるアンケート用紙に、彼のその作品たちについて、その彼に宛てて、自分の思いの丈を必死に書き込むことだけだった。最初はただの憧れだったはずなのだ。
「あなたの作品にとても惹かれました。あなたのような絵を描きたい。」
ジャングル大帝 宰夏 @cactus0715
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