ジャングル大帝

宰夏

第1話 一

田んぼに囲まれた国道の途中にぽつんとある、小さなさびれた公園で彼とカッコつけたさようならをしてから、もう四年は経つだろうか。彼ーここではRと呼ばせていただくこととするーのことであるが、そのRとは今でも時々に会いに行くような関係である。

 Rは藝大生であるが、これまで彼の作品を見るために夜行バスで故郷へとんぼ返りをしたり、はたまた今度は東京の展示会に足を運んだりと、まさに東奔西走している。だがそれは全く苦ではなく、むしろ私の中の楽しみになっている。いわゆる「ファン」と呼ばれる人種にありがちな、熱心な追いかけっこは活動の重要部であり、その都度に展覧会に足を運ぶことに加えて、可能であればそこでRの絵を買うこともまた、その活動のうちのひとつ、至極重要なことなのである。こんないびつな形でRと繋がることを至福に感じている私は一体どんなに滑稽であるだろうか。だが、彼のあの独白のような音読はいつまでも私の脳内に響き渡る。「しかし、しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていますか。」

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