第151話 映像のリアリズム「自転車泥棒」解釈

映像のリアリズム「自転車泥棒」解釈

Intro - イタリアも、日本と同様に、第二次大戦の敗戦国である。


「自転車泥棒」1948年イタリア - ヴィットリオ・デ・シーカ(Vittorio De Sica, 1901 - 1974)

第二次大戦の敗戦国イタリアのネオ・レアリズモ(文化運動)の作品。

悲惨な失業の末、役所の広告貼りの職を得たアントニオは、その仕事に不可欠な自転車を盗まれる。警察にも相手にされず、6才の息子(ブルーノ)と街を歩き回って自転車を探す。しかし、どう探しあぐねても見つからず、そして、自ら自転車を盗もうとして、たくさんの通行人たちによって捕まってしまう。息子の前で、実に惨めなシーンだ。ブルーノがアントニオへ手を差し出し、アントニオもブルーノの手を握り締める、ラストシーンは、よく知られている。

そして、この自転車を探す部分のシーンは長い時間が使われている、諦めずに探し回る親子の様子は、この逆境にあっても、他の選択肢が発生しない・・・

このあたりも、庶民の現実的な視点を大切にしているのだろう。


この作品の特徴は、俳優を使わず素人を起用し、ほぼ全編ロケーション撮影で、ドキュメンタリー的な手法で、戦後の貧しいイタリア社会をリアルにまとめた。

そこには、現実を直感する荒々しい息づかいがラストシーンまで流れる。


追記:映像作家の究極は「映像の美」の創造だろう。

そして、映像作家が、この美の創造を追求する上において、絶対の主義・主張として掲げた旗印がリアリズムだ。

イタリアの戦後のネオ・レアリズモは著名だ。そこには、日常の事実を語り、その事実を掲示すれば、作品はより信頼性のあるものになる事例でもある。

その1例が自転車泥棒だ。

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