頭が死んだ彼女。

ЕСБの革命

頭がなくても私は生きている…。

 俺の彼女は生きている。

 ただ、頭が死んでいる事を除いて…。

 俺の彼女の頭は不慮の事故で死んでしまった。

 けど、頭は脳を取り出して状態で腐敗防止の処理が施された事から、自然と生首として祭壇に乗っている。

 無論、身体の方は何事も無く生きている。

 今の彼女はしゃべる事はしないものの、身体が凄く喜んでいる。


「なぁ、沙耶さや。貴様の頭はこうして仏壇の祭壇にあるけど、手を繋いだだけでこうして俺は貴様の身体の温かさを感じ取る事が出来る。だから俺は君の身体が無事で何よりだ。」


 俺が言える事はただそれだけだった。

 しかもその言葉は沙耶の身体に伝わったらしく沙耶の身体は俺の頭を優しく撫でた。


「沙耶…。」


 何だか、不思議な感じだ。

 沙耶の頭には生や魂を感じれない。だが、身体の方は頭とは裏腹に生や魂の波長を感じ取れる。

 死んだ頭の冷たさと生きている身体の暖かさは何なんだろうか?

 しかも、沙耶の頭部が亡くなってから脳を摘出したせいか、頭部も身体も腐敗しなかった。

 更に特殊な細胞を埋め込まれた影響で紗也の身体の臓器は再生し、身体の臓器は頭が生きていた時よりも元気な状態だった。

 不思議な環境だが、これも医学の進歩と若い女性の身体を残すプロジェクトの進歩だと俺は感じた。


「おっ。沙耶。貴様は高校の授業でロシア語や数学が凄く堪能なんだな。」


 俺は紗也の頭が賢かったのは知っていた。たが、彼女の身体の方も頭がなくても努力しながら勉強している。

 皮肉にも医学の進歩で自殺・殺害された若い女性の身体が特殊な細胞で身体のみ再生・生かす技術が進んだ事で女性の身体は永遠の命を持ち始めた。

 更に頭も特殊な細胞が入ったお陰で脳みそ以外、腐敗せず、歳をとる事もない。

 要するに身体だけ不老不死を得ている状態だ。

 だから、俺は彼女にあの事を言いたかった。


「沙耶。お前の頭は賢かった。でも、それはお前の内臓も賢かったから頭はそれを支える事が出来たんだよ。」


 俺は沙耶に身体があったからこそ頭が安心していると感じ取れた。

 無論、人間の記憶には頭の記憶と体の記憶、魂の記憶の3つがある。

 勿論、人間の身体には複数の魂が宿っているとも俺は思う。

 だから、頭だけでなく身体の各臓器にも魂や脳細胞があると俺は思った。

 すると、俺と沙耶の身体で勉強している事を唐洲からす先生が俺の事を話してきて…。


「おや、拓真。お前は沙耶の身体と共に勉強しているんだね。沙耶の体がなくてもクラスのみんながそれを支え合っている。それは有難い事だと思うぞ。拓真。」


「そうですか。唐洲先生。」


 数学教師の唐洲先生が沙耶と数学の勉強に手伝っている事について話してくれた。


「拓真。お前は沙耶の頭がなくても勉強に協力するのは良い事だぞ。」


「唐洲先生。俺は、沙耶の脳が亡くなった事が俺には理解できません。」


「大丈夫だよ。豊中拓真とよなか たくま君。君だけでなくここにいるクラスの皆が、沙耶の身体を支えあっている。ここにいるクラスメイトも首のない若い女性の生きた身体を目撃しているからこそ、逆に身体を大事にしたい気持ちがあるからな。」


「先生。ありがとう。」


 俺は、紗也の頭がなくてもこうして身体と共に勉強し、彼女の頭に次の脳みそが入るまで彼女の身体と2人きりで楽しもうと思った。

 彼女の身体が喜ぶなら…。

 俺は彼女の為に尽くしてやろうと思った。


 そう、彼女の頭に次の脳みそが入って来るまでは…。

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