第8話 家宅捜索
クルムは
ケストナーは座員達に……と言っても二人だけしか居ないが、二、三日留守にすると告げた。
「旅籠で待っていてくれ」
「はぁーーつ! リューネブルクに行くんじゃなったの? どうするのよ? 向こうでどやされても、知らないわよ」
と、ローズマリーは呆れていた。
次の日、メルン市当局の丸一日をかけた交渉により、大公を動かす事に成功した。教会の口添えが効いたのか? それとも、大公自身がクラーゲン男爵の
リューベックの官史が家宅捜索を行う事となり、クルムとケストナーも同行を許された。勿論、ケストナーはメルン市の
家宅捜索は三日目の早朝に行われた。だが、館には娘達の姿は無かった。何も証拠は残されていなかった。公国の役人の機嫌は最悪だった。
だが、事前交渉で家宅捜索の際にメルン市の役人だけで事情聴取を行える機会を保障してもらっていたので、それを行使した。与えられた時間は三十分だった。
個室にケストナーとクルム、男爵の三人だけとなった。
「では、ガイツ・フォン・クラーゲン男爵。聴取を始めたいと思います。真実をお話下さい」
と、クルムが話し掛けた。
「ふん、馬鹿馬鹿しい。何が真実だ」
「クラーゲン男爵。正直にお答え下さい。先日、我がメルン市当局はナッペン以下四名を子供達を
「そんな奴等など知らん」
「ナッペンは攫った子供達は必ずここの館に連れて来ると供述していますよ」
「だから、そんな男など知らんと言っているだろう」
「気に入った娘が居れば、そのまま留め置いて自分の女にしてしまうと。それも一人や二人だけではなく、何人も」
「はっ、何を
「何処かに隠してのでは?」
「はっ、馬鹿も休み休み言え!」
「クラーゲン男爵。真実をお話下さい」
「真実、真実と何度も
「クルム、代わろう」
と、ケストナーは前に出た。
「ん! 誰だ、お前は? 知らん顔だな」
「そうですか……以前、芝居小屋か何処かでお会いしませんでしたか?」
「芝居小屋? そんな安っぽい所など足を運ぶかっ!」
「三文芝居はお嫌いで?」
「はっ。そんなもん、
「おや、まぁ。やっと真実を吐いた」
「くっ……」
「もっと真実を吐いてくれませんか?」
「……」
本能で危険を察知しているのか、クラーゲン男爵は口を開かなくなった。
「真実を」
「おい、近過ぎる!」
「
「何をする、こら! 止めろっ!」
「汝に与える。真実の口を」
「あっ……」
男爵は一瞬放心した。
「クラーゲン男爵。
「う……あっ」
「そうでしょう? 真実をお答え下さい」
「わ、
「
「そうさね。ぼったくりもいいとこ。皇帝陛下が聞いて呆れるっ!」
「おいおい。口を慎め」
「やだね。伯爵になりたいのなら、二万グルデン払えって。馬鹿かって言いたい。誰が払うか、この糞野郎。地獄に落ちろっ!」
「おい、効き過ぎじゃないのか?」
と、クルムが耳打ちしてきた。
「本心なんだから仕方がない」
「おい、何をこそこそ話してやがる!」
男爵が毒吐いた。
「よし」
と、ケストナーは本題に戻った。
「では、人攫いの、ナッペン達の黒幕だが」
「儂が黒幕だ。金も全て出したー。
「囲っていた娘達は何処に?」
「それは、近くの山荘に。うっ」
「抵抗しても無駄だ」
「くぅ~」
「それからもう一つ聞きたい」
「誰が言う、かぁ」
「ブルーノ・フォン・ディックコップフが両替商のシュノレンに金を持ち逃げされた件を知っているか?」
「知っているー」
「その一件に貴方は関与されていましたか?」
「うう……したも何も、俺がシュノレンを
「どうして?」
「娘を手に入れる為さ。あいつの娘は上玉だろう。糞ったれめ。修道院に逃げ込みやがった。手に入れ損なった」
「貴様っ!」
クルムがボーデンの顔面目掛けて殴り掛かったが、ケストナーは止めなかった。
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