第6話 地下牢

 ケストナーとクルムは市庁舎に向った。

 絢爛けんらんな作りの建物の地上階部分とは異なり、地下牢は薄暗く、悪臭を放っていた。

 ナッペンが取調室に連れて来られた。

「悪いが、君達は出てもらえないかな?」

「それはちょっと」

 と、牢役人が渋ったが、

「皆、出ろ」

 と、クルムが言い放つ。

「しかし」

「いいから。私が責任を持つ」

「危険ですよ」

「なら、危険じゃないようにしろ。早く!」

 ナッペンは拘束具で椅子にがっちりと固定された。

「さあ、皆外に出て」

 と、クルムを牢役人を追い出して、自分も外に出た。

 部屋にはケストナーとナッペンの二人だけになった。

「よう。元気にしてたか?」

「……」

「だんまりか?」

「……」

「これからどうする? 下手すりゃ、一生牢屋の中だぞ」

「……」

「仕方が無い」

 と、ケストナーは自分のポケットをまさぐった。

「おい、何をする?」

「じっとしていろ」

「人を呼ぶぞ!」

 ケストナーは布切れを取り出すと、男の口の中に押し込んだ。

「う……う」

 といううめき声など気にも留めず、男の背中に指で魔法陣を描いた。

「う、うっ」

「汝に与える。真実の口を」

「うぅ……」

 男の口から布切れを取り除いた。

「おい。お前の親玉は誰だ?」

「んっ!」

 と、男は精一杯、口を真一文字に閉じた。

「親玉は誰だ? 居るなら言え!」

「んんっ……」

「吐くんだ!」

「クラーゲンだ! ガイツ・フォン・クラーゲン男爵!」

 と、ナッペンが叫んだ。

 ケストナーはクルムを呼んだ。

「喋る気になったようだ」

「本当か?」

「ああ……おい。お前の親玉は誰だ?」

「ガ、ガイツ・フォン・クラーゲン男爵だ。男爵が金を出してくれる。元手も全部」

「証拠は? それを証明する物は何かあるか?」

「有る! 男爵の館に女が何人も居る」

「女?」

「そうだ。子供達をリューベックに運ぶ際、必ず男爵の館に寄る。気に入った娘が居れば、自分の物にしちまのさ」

「攫って来た娘を囲っているという訳か?」

「そうだ。何人も侍らしている。次々に」

「じゃあ、ハーレムを形成しているのか?」

「そうでもない」

 と、ナッペンは首を振った。

「飽きた娘はさっさと売り飛ばすからな。今度は娼婦として」

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