第4話 酒
『サロメ』は少し
ローズマリーが
「やあ、ケストナー。とても良かったよ」
と、クルムが声を掛けてきた。
「有難うございます」
「特にローズマリー嬢の踊りが素晴らしかった」
「どう致しまして」
と、まだ衣装のままのローズマリーが愛想笑いを返した。
「所で、
と、ケストナーは客人に
「許可を受けずに、旅籠で芝居を打とうとしている不届き者が居るとの
「ご冗談を?」
「冗談だ。ははっ」
「人が悪い」
「本当はその後の状況を伝えに来た」
「そいつは
「少し込み入った話もあるんだが」
「では、
と、部屋の方に移動したが、気にする
ケストナーは開け放たれている戸を外から閉めた。
「失礼。恥じらいがございませんで」
「いや」
薄暗い廊下でも、クルムの顔が赤く染まっているのが分かった。
「子供達だがね。孤児院ではなく、聖霊病院に預かってもらっている。今回は事件が特殊だからね」
「はい」
「実は既に一人、親が迎えに来たよ」
「もう?」
「ああ。親子共々泣いて抱き合っていた」
「それは良かった」
「他の子達は
「ユッタが、彼女がどうかしましたか?」
「うん。実は男の子だったんだ」
「男の子っ?」
「そう、男の子。本当の名前はハンス。最初の
「いや、全く気付きませんでした」
「だろうな。顔が整っているし。人攫いも、商品の価値を上げる為に女の子に仕立てたんだろう。そういう趣向の奴には高く売れるだろうし。もしかしたら、異国に売り飛ばされていたかもしれない」
ケストナーは
「明日、立つんだったな?」
「はい、明日の朝に」
「なら、町を出る前に聖霊病院に行って、子供達に会って行かないか?」
「
部屋のドアが開いて、ローズマリーが出て来た。
「何の話?」
「明日の朝、町を出る前に、子供達に会いに行こうって話さ。全員、聖霊病院で預かっているんだと」
「聖霊病院に? 子供達と?」
「そうだ」
「若い修道女を見に行きたいだけじゃないの?」
「これだ!」
と、ケストナーは降参して、諸手を上げた。
「ねえ、クルムさん。今から皆で酒盛りなんだけど、御一緒にどう?」
「私が?」
「ええ。それとも、
「そんな事は?」
「
「いえ。付き合いましょう」
「止めといた方が」
「構いません」
「知りませんよ。絡まれても」
「ははっ。そいつは楽しみだ」
と、クルムが
「何が楽しみなんですか?」
「ローズマリーが酔った所さ」
「
「何よ。その、
と、ローズマリーがゼーマンに噛み付いた。
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