第2話 市庁舎

 市庁舎に到着すると、参事会員のクルム・ヴァールハイトが出迎えてくれた。

「やあ、ケストナー」

「これはクルムさん。お久し振りです」

「大捕り物をしてくれたそうだな?」

「はい。人攫ひとさらいの男どもは縛って、後ろの荷台に放り込んであります」

「どれ、見てみよう……嗚呼ああー、四人も。よし、中の奴等を連れ出せ!」

 官史が男どもを荷台から引きり下ろして、建物の中へ連れて行った。

 続いて、後ろの馬車の子供達の見分も行われた。

「取り敢えず子供達は中で休ませよう。嗚呼あぁ、ケストナー。君も暫く付き合ってくれないか? 奴等を捕まえた時の事を詳しく聞きたい」

「それは良いですけど。実は今年はこの町を通り過ぎるつもりでいましてね。次の興行はリューネブルクで行う予定なんですよ」

「長居は出来ないと?」

「一泊ぐらいなら」

「それで結構。宿代と食事代は市の方で持たせてもらおう」

「それは何より。感謝します」

「では、中に入ろうか」

 クルムの執務室で、ケストナーは状況を説明した。

「子供達の家は大体ここら近辺ですが、一人だけ、マクデブルクから連れて来られた子が居ます」

「マグデブルク大司教領からか……もしかして、さっき君に寄り添っていた女の子かい?」

「ええ、そうです。ユッタと言います。マグデブルクで攫われた後、別の男に買い渡されて。更にその後、今度はあの男達に買い渡されたそうです」

「さもありなん。あの子は他の子達とは少し違う」

「ええ」

「着ている服はそう上等ではなかったが、良い所のお嬢さんかな?」

「家は仕立て職人だそうです」

「仕立て職人ねえ……所で、座員の数が少なくないか?」

「ええ。座が二つに割れて。今は自分も含めて三人だけです」

「どうして?」

「色々です。まぁ、こういうのは旅回りの一座には付き物ですよ。年がら年中くっ付いたり、離れたり」

「座員は補充しないのかね?」

「旅すがら、その内に」

 と、お茶を濁した。

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