第4話 通過

「ふぅー」

 混雑している関を何とか通り抜けて、ゼーマンが溜息を吐いた。

 徒歩の旅行者達は取り敢えずこの場を早く立ち去るのが得策とばかりに、小走りで駆けて行き、馬車をも次々と追い抜いて行った。

「ねえ、ケストナー」

 と、ローズマリーが声を殺しながら、ただした。

「妖術を使ったでしょう?」

「ん?」

「そうでしょう?」

「ははっ」 

「私は別に館に行って、踊っても良かったのよ」

「ふん。あの手の人間に係わると祿ろくな事がない。いいのさ」

「でも……」

 もう言うなと、ケストナーは右手でローズマリーの言葉をさえぎった。

 だが、

嗚呼ああっー!」

 ローズマリーが声を上げた。

「雨が降ってきたわ」

「ゼーマン、飛ばせ!」

「それっ!」

 と、ゼーマンが馬の尻に鞭を振るった。

「ねえ、雨を止めてよ」

「無茶言うな」

 ローズマリーの無理な願いに、ケストナーはぼやいた。

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